「特定技能1号の社員に長く活躍してほしいが、2号への移行方法がわからない」「日本で長期的にキャリアを築きたいけれど、2号の条件が複雑で…」といったお悩みはありませんか? 2023年に対象分野が拡大したものの、比較的新しい在留資格であるため、情報が少なく戸惑う方も多いでしょう。
特定技能制度とは、人手不足が深刻な産業分野において外国人材の就労を認めるために創設された在留資格です。
この記事では、「特定技能2号」に焦点を当て、在留期間の上限撤廃や家族帯同が可能になるメリットを1号と比較しながら解説します。
さらに、分野別の取得条件や試験情報の一覧、申請時に企業と本人が協力すべき注意点まで網羅的に紹介します。
この記事を読めば、特定技能2号の全体像を深く理解し、受け入れ企業も外国人本人も、長期的なキャリアプランの実現に向けた具体的な準備を始めることができます。
より詳細な公式情報については、出入国在留管理庁のウェブサイトもご参照ください。
出典:特定技能制度
特定技能外国人人材紹介会社おすすめ10選!選び方や費用相場を解説
特定技能2号とは?
特定技能2号は、人手不足が深刻な分野で、外国人の就労を認める在留資格「特定技能」の一つです。特定技能には1号と2号があり、2号は1号に比べて、より高い技能と経験を持つ熟練した外国人が取得できる資格です。
豊富な実務経験を持ち、現場でリーダーの役割を担える人材が対象となります。
当初は「建設」と「造船・舶用工業」の2分野のみが対象でしたが、2023年に分野が拡大され、現在は11分野で取得が可能です。
特定技能1号と2号の違い
在留資格「特定技能」には1号と2号があり、それぞれ必要なスキルレベルや日本での待遇が異なります。特定技能2号は、1号よりも高いスキルを持つ外国人を対象としており、より良い条件で日本に滞在することが可能です。
両者の主な違いは以下の通りです。
項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
在留期間 | 通算5年まで | 更新上限なし |
永住権の獲得 | 不可 | 要件を満たせば可能性あり |
技能水準 | 相当程度の知識または経験を必要とする技能 | 熟練した技能(各分野の技能試験で確認) |
外国人支援 | 必須 | 不要 |
家族の帯同 | 不可 | 条件を満たせば可能 |
日本語能力水準試験の有無 | あり | なし |
試験の実施状況 | 国内外で実施中 | 主に国内で実施中 |
上記の違いから、特定技能2号は「外国人が長期的に働きやすい在留資格」と言え、多くの外国人が取得を目指しています。企業にとっても、特定技能2号への道を示すことは、優秀な人材を確保し、定着させる上で重要な要素となります。
ただし、特定技能2号を取得するには、1号よりも高い「熟練した技能」が求められます。十分な実務経験を持ち、現場でリーダーシップを発揮できる人材が対象となるため、試験や実務経験などの要件は1号より厳しく設定されています。
特定技能1号から2号への移行方法を徹底解説!要件や試験内容も紹介
特定技能2号取得のメリット
特定技能2号は、1号に比べて熟練した技能が求められる一方で、日本で長期にわたり就労・生活するための多くのメリットがあります。そのため、多くの外国人材が取得を目指し、雇用企業にとっても重要な在留資格となっています。
特に見逃せないのは、在留期間が無期限で更新可能になる点です。特定技能1号の在留期間は通算5年までですが、2号には制限がなく、更新手続きを行うことで半永久的に日本に滞在し、働くことができます。これにより、外国人材は在留期間を気にせず、安心して日本でキャリアを築けます。企業にとっても、熟練技能を持つ人材を長期雇用できることは大きな利点です。
さらに、特定技能2号を取得すると、条件を満たせば配偶者や子供などの家族を日本に呼び寄せ、共に暮らせます。これは1号では認められていません。家族と生活を共にできることは、外国人材にとって精神的な支えとなり、日本での生活基盤をより強固にできます。
また、特定技能1号から2号への移行は、外国人材にとって日本での明確なキャリアステップとなり、仕事へのモチベーション向上につながります。より良い待遇の2号を目指すことができ、企業が2号取得に向けた支援体制を整えることは、優秀な人材の確保と定着に不可欠です。
加えて、特定技能2号を取得することで、永住権取得が可能となります。特定技能1号の在留期間は、永住権申請に必要な「10年以上の居住」期間として算入されませんが、2号へ移行することで審査対象となり、他の要件を満たすことで永住権を取得できる可能性が生まれます。将来的に日本への定住を希望する外国人にとって、これは非常に魅力的な要素と言えるでしょう。
特定技能2号の取得条件
特定技能2号は、1号に比べてより高度な技能が求められるため、在留資格を申請するには技能試験の合格や一定期間の実務経験、一部の分野における日本語能力などの要件を満たす必要があります。これらの要件は、外国人本人の努力だけでは達成が難しく、多くの場合、雇用する企業の協力が不可欠です。
2024年9月現在、特定技能2号の対象となる11分野の取得条件は以下の通りです。
分野 | 取得条件 |
---|---|
外食業 |
|
飲食料品製造業 |
|
工業製品製造業 | 以下のいずれかを満たすこと
|
農業 |
以下のいずれかの実務経験
|
建設 |
|
ビルクリーニング |
|
造船・舶用工業 |
※現在は「溶接」のみ試験を実施中 |
自動車整備 | 以下のいずれかを満たすこと
|
航空 | 空港グランドハンドリング
航空機整備
※2号の試験はまだ実施されていません |
宿泊 |
|
漁業 |
|
特定技能2号の試験情報を一覧で確認
特定技能2号の対象分野は、2023年に大幅に拡大され、従来の2分野から11分野になりました。特定技能2号の在留資格を申請するための主な要件は、各分野の試験に合格することと、分野ごとに定められた実務経験を満たすことです。
2024年9月末現在の各分野における試験の実施状況、費用、関連情報については、以下の表をご確認ください。
項目 | 分野 | 試験実施状況 | 受験料 | 合格証明書 交付手数料 | 試験参考資料 |
---|---|---|---|---|---|
飲食サービス | 外食業 | 実施中 | 14,000円 | 結果通知書を自身で印刷 | https://otaff1.jp/howto_corp/#tokutei2gou |
飲食料品製造業 | 実施中 | 15,000円 | 結果通知書を自身で印刷 | https://otaff1.jp/howto_corp/#tokutei2gou | |
製造 | 工業製品製造業(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業) | 実施中 | 15,000円 | 15,000円 | https://www.sswm.go.jp/exam/about-ssw2/ |
農林水産業 | 農業 | 実施中 | 15,000円 | 結果通知書を自身で印刷 | https://asat-nca.jp/asat2 |
漁業 | 実施中 | 15,000円 | 結果通知書を自身で印刷 | https://suisankai.or.jp/skill/ | |
その他 | 建設 | 実施中 | 2,000円 | 結果通知書を自身で印刷 | https://jac-skill.or.jp/exam/ |
ビルクリーニング | 実施中 | 16,500円 | 11,000円 | https://www.j-bma.or.jp/qualification-training/zairyu | |
造船・舶用工業 | 溶接のみ実施中 | 48,400円 | 96,800円 | https://www.classnk.or.jp/hp/ja/authentication/evaluation/ | |
自動車整備 | 実施中 | 4,800円 | 16,000円 | https://www.jaspa.or.jp/mechanic/specific-skill/ | |
航空 | 未実施 | – | – | – | |
宿泊 | 実施中 | 15,000円 | 12,100円 | https://caipt.or.jp/tokuteiginou/aab |
特定技能2号の試験の申請は、外国人本人が個人的に行える分野もありますが、実務経験の証明などで、ほとんどの場合、企業の協力が必要です。そのため、申請の手続きは企業担当者も一緒に確認しながら進めるのがおすすめです。
また、受験料は1万円を超える分野が多く、合格証明書の発行にも高額な手数料がかかる場合があります。もし不合格となり再受験となると、受験者の金銭的な負担は大きくなるでしょう。
さらに、試験は日本語で行われるため、日本語能力試験の合格が要件に含まれていない分野でも、ある程度の日本語能力が求められます。
特定技能2号の3つの注意点
ここでは、特定技能2号の取得を目指す外国人や、その雇用を検討する企業が注意すべき点を3つ紹介します。
|
企業が試験申し込みを行う
特定技能2号の試験の申し込みには、多くの分野で企業の協力が必要です。例えば、外食業や飲食料品製造業では、2024年7月現在、企業を通してのみ申請できます。
個人で申請できる分野でも、実務経験を証明するために企業の協力が欠かせない場合がほとんどです。農業分野では個人での申請が可能ですが、実務経験の証明には企業が記入するべき事項が含まれます。宿泊業やビルクリーニング業でも、実務経験証明書の提出に企業の協力が必要です。
このように、受験の手続きには企業が何らかの形で関わる必要があるため、申請の際は外国人本人と企業の担当者が協力して進めることが大切です。
在留期限に気を配る
特定技能2号の申請要件として、多くの分野で「2年以上の管理・指導経験」などの実務経験が求められます。特定技能1号の在留期間は最長5年のため、期間の後半に転職したり、管理・指導の役割に就くのが遅れると、在留期限までに必要な実務経験を満たせない可能性があります。
そのため、特定技能2号を目指す外国人はもちろん、雇用企業も、特定技能1号の段階から計画的なキャリア形成が重要となります。
企業側に証書を出してもらう必要がある
特定技能2号を申請・受験する際は、実務経験を証明する書類の提出が必要です。この証明書は、現在の勤務先だけでなく、以前の勤務先からも提出が必要となる場合があります。
特に転職経験がある方は、以前の職務経験を合算しないと要件を満たせないことがあり、その場合、以前の勤務先との良好な関係が非常に重要です。円満に退職していない場合、証明書の依頼が難しくなることもあります。そのため、特定技能2号を目指す外国籍の方は、日頃から企業と良好な信頼関係を築くことが大切です。
また、企業は、現在雇用している外国籍従業員だけでなく、退職した元従業員から実務経験証明書の発行を依頼される可能性があります。製造業を管轄する経済産業省の告示では、過去に雇用していた外国人からの依頼にも応じるように明記されています。証明書の作成に多くの時間はかからないため、依頼があった際はできる限り対応することが望ましいでしょう。
特定技能人材受け入れ時の「事前ガイダンス」とは?内容や実施時間を解説
特定技能2号のまとめ
この記事では、特定技能2号について解説してきました。
特定技能2号は、熟練した技能を持つ外国人が日本で長期的に就労するための在留資格です。特定技能1号と異なり、在留期間の上限がなく、条件を満たせば家族の帯同や永住権申請も可能になるなど、多くのメリットがあります。
特定技能2号を取得するには、分野ごとに定められた技能試験に合格し、多くの場合でリーダーとして複数の従業員を指導・管理する2年以上の実務経験が求められます。2023年に対象分野が11分野に拡大され、各分野で試験が開始されています。
ただし、試験の申し込みや実務経験の証明には企業の協力が不可欠で、特定技能1号の在留期限(通算5年)内に要件を満たす計画性も重要です。外国人材と受け入れ企業の双方にとって魅力的な資格ですが、その取得には本人と企業の計画的な準備と密な連携が成功の鍵となります。