特定技能で「訪問介護」が4/21から解禁!受け入れ要件について解説

2025年4月21日より、特定技能の対象分野として「訪問介護」が新たに解禁され、一定の条件を満たす外国人材が訪問介護サービスに従事できるようになりました。

ただし、受け入れにあたっては、訪問介護特有の要件や注意点を正しく理解しておくことが求められます。

そこで本記事では、制度の概要から受け入れ要件、導入時の注意点まで詳しく解説します。

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特定技能での訪問介護が解禁された背景

特定技能での訪問介護が解禁された背景

2025年4月、外国人による訪問介護がついに「特定技能1号」の対象分野として解禁されました。従来は施設での介護のみが認められていた特定技能で訪問介護も認可された背景には、以下の要因が関係しています。

  1. 訪問介護分野におけるヘルパーの人手不足が深刻化しており、公益財団法人介護労働安定センターが2024年に行った調査によれば、人手不足とする事業所(「大いに不足」、「不足」、「やや不足」の合計は65.2%となっている)
  2. 介護現場では職員の高齢化や「3K(きつい、汚い、危険)」イメージによる離職が進み、定着率も低い など

出典:令和6年度「介護労働実態調査」結果の概要について

上記の構造的な課題を背景に、外国人材の活用による現場支援が必要不可欠となり、今回の制度改正に至りました。

訪問介護に従事できる在留資格は以下の通りです。

在留資格 在留期間 日本語能力 特徴
介護(在留資格) 1~5年 (更新可・永住可) JLPT N2程度+介護福祉士合格 介護福祉士国家資格の取得者のみ対象
特定技能1号(介護分野) 最長5年(更新可) JLPT N4以上 初任者研修修了、日本語能力、1年以上の実務経験などが求められる
技能実習(介護職種) 最長5年 JLPT N4以上 (技能実習2号に移行時N3目安) 介護職員初任者研修修了+1年以上の実務経験があれば訪問介護可(2025年4月以降)
EPA介護福祉士候補者 原則4年(延長可) JLPT N3以上 ・母国で研修後来日し、4年以内に介護福祉士試験受験する必要がある

・合格で在留資格「介護」へ移行可能

特定技能と同様に技能実習でも条件付きで訪問介護が認められるようになったのも、大きな変更点の一つです。

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特定技能での訪問介護が対象になる施設やサービス

特定技能での訪問介護が対象になる施設やサービス

特定技能での訪問介護が対象になる施設やサービスは指定されており、その範囲内で活用が可能です。

ここでは、特定技能で訪問介護が可能な施設やサービスについて解説します。

  • 対象になる施設
  • 対象になるサービス

対象になる施設

特定技能1号(介護分野)で訪問介護業務に従事できる施設は、以下の法律別に定められています。

法律 施設・事業
児童福祉法 児童発達支援センター、障害児入所施設、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援
障害者総合支援法 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、移動支援事業
老人福祉法・介護保険法 指定訪問介護、指定訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、介護予防系訪問入浴介護など

なお、上記の施設・事業で特定技能外国人を受け入れるためには、「介護分野における特定技能協議会」への入会が必須で、受入れ事業所情報が登録された入会証明書の発行が必要となります。

対象になるサービス

特定技能1号(介護分野)の訪問介護で対象となるサービスは介護保険と障害福祉でそれぞれ以下のように分かれています。

【介護保険】
・訪問介護
・訪問入浴介護
・夜間対応型訪問介護
・介護予防訪問入浴介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・訪問型サービス(総合事業)
【障害福祉】・居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護
・重度障害者等包括支援
・居宅訪問型児童発達支援
・移動支援事業(地域生活支援事業)

特定技能外国人が訪問介護できるようになる要件

特定技能外国人が訪問介護できるようになる要件

特定技能外国人が訪問介護できるようになるためには、以下の要件を満たす必要があります。

ここでは、下記の要件について解説します。

  • 特定技能「介護分野」の取得
  • 介護職員初任者研修課程の修了と1年以上の実務経験

特定技能「介護分野」の取得

訪問介護への従事が認められるには、まず特定技能「介護分野」の取得が必要です。

特定技能「介護分野」の取得の方法は以下の4つが挙げられます。

1. 試験合格による取得
以下3つの試験に合格することで、特定技能「介護分野」の在留資格を取得できます。

  1. 介護技能評価試験
  2. 日本語試験
  3. 介護日本語評価試験

特定技能「介護分野」の場合、日本語試験に加えて介護分野専門の日本語評価試験にも合格する必要があります。

2. 技能実習2号修了者からの移行

介護分野で技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能「介護分野」への在留資格変更が可能です。
ただし、「介護日本語評価試験」のみは別途合格が必要です。

3. 介護福祉士養成施設の修了者

日本国内の介護福祉士養成施設(専門学校・短大等)を修了した外国人も、特定技能「介護分野」の取得が可能です。
また、修了後に介護福祉士資格を取得すれば、さらに上位の在留資格である「介護」へ変更もできます。

4. EPA介護福祉士候補者としての4年間の従事

経済連携協定(EPA)に基づいて来日した介護福祉士候補者が、4年間の研修・実務期間を満了した場合、試験を受けずに特定技能「介護分野」へ移行できます。

特定技能「介護分野」の取得には、試験に挑戦するルートから、実務経験や日本国内での学習を経て取得する方法まで複数のルートが用意されているのが特徴的です。

介護職員初任者研修課程の修了と1年以上の実務経験

特定技能外国人が訪問介護に従事するためには、介護職員初任者研修課程の修了と1年以上の実務経験が必要です。

実際に従事できる内容は資格・研修で異なり、その内容は以下の通りです。

資格・研修 居宅介護 重度訪問介護 同行援護 行動援護
①介護福祉士

②実務者研修修了者

〇(実務1年) ×
③居宅介護職員初任者研修課程修了課程

④介護職員初任研修課程修了者

〇(実務1年) ×
⑤障碍者居宅介護従業者基礎研修課程修了者 〇(実務1年) ×
⑥重度訪問介護従業者養成研修課程修了者(基礎課程) 〇(実際に直接関わりながら仕事をした経験が必要) × ×
⑦生活援助従事者研修課程修了者 × × × ×
⑧同行援護従業者養成研修課程修了者(一般課程) × × ×
⑨行動援護従事者養成研修課程修了者

⑩強度行動障害支援者養成研修修了者(基礎研修および実践研修)

× × 〇(実務1年)

訪問介護で特定技能外国人を雇用するメリット

訪問介護で特定技能外国人を雇用するメリット

特定技能外国人の雇用は、即戦力となる若年層の介護人材を安定的に確保できる点で、訪問介護事業者にとって大きなメリットとなります。

まず、最大のメリットは「人手不足の緩和」です。訪問介護は1対1で高齢者の自宅を訪問し、身体介護や生活援助を行うため、現場には十分な人員配置が欠かせません。そのため、20〜30代の外国人介護人材を雇用できれば、持続可能な人材配置が実現できます。

また、外国人材を受け入れることで、組織の多様性が高まり、既存職員の刺激にもつながります。異文化コミュニケーションを通じて日本人スタッフが改めて自分のスキルを見直すきっかけにもなり、職場全体のモチベーション向上や人材育成にも好影響を与えられるでしょう。

人手不足が続くなかで、特定技能外国人の雇用は質の高い人材を安定的に確保する手段として、今後ますます活用が広がると予想されています。

企業が特定技能外国人を訪問介護させるときの注意点

企業が特定技能外国人を訪問介護させるときの注意点

企業が特定技能外国人を訪問介護させるときの注意点は以下の2つです。

ここでは、下記の注意点について解説します。

  • 実務経験に応じた対応を行う
  • 利用者およびその家族への説明が必須

実務経験に応じた対応を行う

施設とは異なり一人でも利用者宅に向かう訪問介護では、安全とサービス品質を確保するため、特定技能外国人に求められる「実務経験」と「対応措置」には細心の注意が必要です。

まず原則として、訪問介護など訪問系サービスに従事するには介護事業所等での実務経験が1年以上必要とされています。ただし、実務経験が1年未満の特定技能外国人でも、以下の条件を満たせば訪問介護に従事できます。

  1. 日本語能力がN2相当以上であること
  2. 同行訪問を実施すること:週1回のサービス提供の場合:原則 6か月間同行訪問

※利用者・家族の同意がある場合:3か月同行+ICTを活用して常時事業所と連絡可能な体制を整えることでも対応可

実務経験が満たない場合でも、N2以上の日本語能力と条件を満たした同行訪問により問題なく従事させられます。

利用者およびその家族への説明が必須

特定技能外国人を訪問介護に従事させる場合、受け入れ事業所は以下の内容を書面により説明し、利用者またはその家族から署名を得る必要があります。

書面に記載すべきおもな内容は以下の通りです。

  1. 外国人介護職員が訪問する可能性があること
  2. 外国人介護職員の実務経験などの情報
  3. ICT機器を使用する可能性があること(例:見守りカメラや連絡アプリ)
  4. 不安や疑問時に利用できる事業所の連絡先 など

上記の内容に利用者やその家族はどのような職員が訪問するのか、どんな体制かを事前に十分理解した上でサービスを受けられるようになるため、必ず実施する必要があります。

特定技能外国人に訪問介護させるための企業の義務

特定技能外国人に訪問介護させるための企業の義務

特定技能外国人に訪問介護させるために企業が果たさなければならない義務は以下の通りです。

  • 研修実施
  • 必要なOJT実施
  • 務説明・意向確認・キャリアアップ計画作成
  • ハラスメント対策
  • ICT活用等の環境整備

ここでは、以下の資料・ページを参考に上記の義務について解説します。

出典:外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について

出典:外国人介護人材が訪問系サービスに 従事できるようになりました

研修実施

特定技能外国人を訪問介護に従事させるために、受け入れ企業(事業所)には、研修を含む準備義務が制度的に組み込まれています。
受け入れ事業所が実施すべき研修は以下の通りです。

  1. 訪問介護の基本事項
  2. 生活支援技術
  3. 日本の生活習慣・マナー
  4. 緊急時の対応

上記の研修を漏れなく実施することで、特定技能外国人を訪問介護に従事させられるようになります。

必要なOJT実施

特定技能外国人を訪問介護に従事させる企業(受け入れ事業所)には、「OJT」の実施が義務づけられています。訪問介護は、介護職員が一人で利用者の自宅を訪問する特性上、現場での判断力や緊急時の対応スキル、利用者との信頼関係構築などが不可欠です。

特に、外国人介護人材が文化や言語の違いを超えて独立して業務を行うには、十分な準備と段階的なサポートが必要となります。
そのため、厚生労働省は訪問系サービスへの外国人配置では、「一定期間の同行訪問と実地指導(OJT)」を企業側の責任として明文化しています。

また、OJTの実施記録や計画書は、監査や協議会提出書類において確認されることもあるため、形式的な対応ではなく、継続的な育成と安全管理の一環として制度に即した運用が求められます。

業務説明・意向確認・キャリアアップ計画作成

受け入れ企業に課せられる「業務説明・意向確認・キャリアアップ計画作成」の義務は、双方の信頼関係を築き、長期的な協働を実現するための重要な取り組みです。

まず、企業は訪問介護の業務内容や注意点を外国人介護スタッフに丁寧に説明し、その内容に基づいて希望や意向がどうかを確認しなければなりません。

内容としては、例えば「どんな介護職員になりたいか」「将来どんな役割を担いたいか」などの本人の目標や思いについて話し合うことが推奨されています。

また、習得を目指す介護スキルや知識、将来取得したい資格や研修、キャリア目標などの具体的な整理も求められます。そして、話し合いで得られた情報を基に、企業と本人が共同でキャリアアップ計画を作成し、実現に向けた具体的なステップを計画するのが受け入れ企業が果たすべき義務の一つです。

また、このキャリアアップ計画には、企業側と本人の署名が必要です。作成後は、本人に写しを交付し、巡回訪問等を実施する公的機関にも提出することが義務とされています。

ハラスメント対策

特定技能外国人を受け入れる企業には、制度の透明性と外国人労働者の安心・安全を守るために各種ハラスメント防止のための措置が義務づけられています。

具体的なハラスメント防止のための措置は以下の通りです。

  1. 相談窓口の設置
  2. ハラスメント対応マニュアルの整備・共有
  3. 対応責任者の明確化

ハラスメント防止対策は、制度の安心と現場の安心を両立させる上で大切な施策であるため、確実に実施するようにしましょう。

ICT活用等の環境整備

訪問介護の現場では、特定技能外国人が一人で訪問する際に万が一の事態に備え、受け入れ企業に対して、ICT活用を含む緊急時対応体制の整備が義務づけられています。

企業はまず、緊急時の連絡先や対応フローを明示したマニュアルを作成し、従業員が迅速に対応できるようにしなければなりません。

また、緊急時にすぐ駆け付けられる体制、さらにはサービス提供記録や申し送りを全職員で共有できる仕組みをICTを活用して整える施策も求められます。

ICT活用ではタブレットやコミュニケーションアプリの導入が推奨されており、これにより特定技能外国人の業務負担軽減や緊急時の連絡確保、さらに記録作成や申し送りの効率化を図れます。

ICTを活用した環境整備は、制度の根幹である「安全・安心な介護サービスの提供」を具体的に支えるための必須の要件の一つです。

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特定技能外国人に訪問介護させるための企業側の手続き

特定技能外国人に訪問介護させるための企業側の手続き

訪問介護分野で特定技能外国人を受け入れるために必要な手続きの流れは以下の通りです。

手続き 概要
1.雇用のための準備と制度整備 研修計画・OJT計画・キャリアアップ計画・ハラスメント・ICTなどの体制整備を行い、訪問系サービスへの外国人配置に備える
2.JICWELSへの適合確認申請を行い、「適合確認書」を取得する 訪問介護に従事させる前に、公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)へ適合確認申請を行い、各外国人ごとに「適合確認書」の発行を受ける必要がある
3. 特定技能協議会へ入会し「入会証明書」を取得する 在留資格申請前に、介護分野特定技能協議会への加入手続きを行い、受け入れ事業所情報が登録された 入会証明書を取得しなければならない
4.出入国在留管理局(入管)での在留資格申請 取得した入会証明書とそのほかの必要書類を添えて申請を出入国在留管理局に提出
5.OJTを実施して訪問介護業務開始 在留資格が取得され次第、OJTを実施し、同行訪問を経た上で、一人で訪問介護業務を行えるよう段階を踏んで対応
6.協議会への外国人情報登録 受け入れ後、在留資格取得から4ヶ月以内に協議会申請システムへ外国人介護人材の情報を登録
7. 巡回訪問対応 JICWELSの事業所への巡回訪問や質問票提出などに対応
8. 定期報告・キャリアアップ計画更新 キャリアアップ計画を毎年更新し、評価期間終了から4ヶ月以内に協議会および関係機関へ提出する

上記にあるように、特定技能外国人を訪問介護に従事させるには、事前の準備から実務開始後の運用、そして定期的な報告まで、企業として対応すべき手続きが多岐にわたります。

各フェーズでの書類や期限を管理しながら、制度に即した運用を行うと、安心かつ安定した特定技能外国人の受け入れが実現します。

特定技能での訪問介護のまとめ

特定技能での訪問介護のまとめ

2025年4月より、特定技能外国人による訪問介護が正式に解禁されたことで、慢性的な人手不足に悩む介護業界にとって新たな活路が開かれました。

しかし、訪問系サービスは一人で高齢者の自宅に赴きケアを行うという高度な対応力が求められるため、企業側には多くの義務や手続きが課されている点に注意が必要です。

まず、受け入れ企業は、外国人が安心・安全に働ける環境を整備することが求められます。具体的には、訪問介護の基本事項、生活支援技術、日本のマナー、緊急時対応などを網羅した研修を実施し、業務に必要な実務経験が1年以上ない場合には同行訪問を通じた段階的なOJTを行わなければなりません。

また、本人への業務内容の説明や意向確認を行った上で、キャリアアップ計画を作成し、定期的に更新・提出する必要もあります。
さらに、ハラスメント対策として相談窓口の設置や対応マニュアルの整備、ICTを活用した支援体制や緊急連絡体制の構築も必須です。

特定技能外国人を訪問介護に従事させるためには、企業側があらゆる面で適切に準備・対応する必要があります。企業に課せられた義務を一つずつ確実に遂行すれば、特定技能外国人および利用者が安心して過ごせる訪問介護の体制が構築できるでしょう。
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