特定技能「電子・電磁情報関連産業」とは?業務区分や取得方法を解説

特定技能「電子・電気情報関連産業」は、電子部品の製造から電気機器の組立、情報通信機器の品質管理まで、幅広い業務が対象となる在留資格です。人手不足が進む製造業で、外国人材の活用に役立つ在留資格として注目度が高まっています。

本記事では、特定技能「電子・電気情報関連産業」の概要をはじめ、業務区分、取得方法、受け入れ企業に求められる条件についてわかりやすく解説します。

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特定技能「電子・電磁情報関連産業」とは?

特定技能「電子・電磁情報関連産業」とは?

特定技能「電子・電磁情報関連産業」とは、電気・電子機器や情報通信機器の製造に携わる分野において、即戦力となる外国人労働者の受け入れを可能にする在留資格です。

2019年4月の出入国管理法改正により新設された「特定技能1号」の対象14分野の一つで、2022年には他の製造分野と制度が統合され、より柔軟な運用が可能となりました。

電子・電磁情報関連産業の特定技能が重要視される背景には、日本の製造業を取り巻く深刻な人手不足があります。厚生労働省の調査によれば、電気・電子関連製造業では有効求人倍率が2倍を超える職種もあり、求人に対して人材が全く追いついていない状況です。

特に、精密機器の組立やプラスチック部品製造などは、高度な注意力と継続的な労働力が求められるため、日本人労働者の確保が難しい業務となっているのが現状です。

また、電気・電子関連分野は、今後ますます高度化・複雑化していくと見込まれており、例えば、IoT機器や電動車両の増加により、基板実装やセンサー関連の部品加工において高い精度と効率が求められるようになっています。

先端技術を扱う現場では、一定の技術水準を満たした人材が不可欠であり、技能試験や日本語試験をクリアした外国人材は、そのニーズに応え得る存在として注目されているのも特定技能「電子・電磁情報関連産業」が重要視される理由の一つです。

特定技能「電子・電磁情報関連産業」の業務範囲

特定技能「電子・電磁情報関連産業」の業務範囲

特定技能「電子・電磁情報関連産業」が適用される対象産業は、日本標準産業分類において「電子部品・デバイス・電子回路製造業」「電気機械器具製造業(内燃機関電装品を除く)」「情報通信機械器具製造業」などの分野です。

特定技能「電子・電磁情報関連産業」の外国人材に任せられる業務の例は以下の通りです。

  1. 機械金属加工:鋳造、プレス加工、鍛造、溶接、プラスチック成形、塗装、機械保全、工業包装など
  2. 電気・電子機器組立て:電子・電気機器の組立て、プリント配線板の製造、各種仕上げや保全、工業包装など
  3. 金属表面処理:めっき(電気めっきや溶融めっき)、アルミニウム陽極酸化処理など

製造現場に付随する関連業務も「副次的に」従事可能とされており、以下のような業務が該当します。

  1. 原材料・部品の搬送
  2. 製造前後の工程作業
  3. クレーン・フォークリフト運転
  4. 清掃・保守管理 など

雇用形態については、特定技能で受け入れる際には「直接雇用」の形式に限られ、派遣や間接的な契約は一切認められていません。

また、給与(報酬)については法律で厳しく定められており、外国人特定技能者には、最低賃金以上、かつ同一業務の日本人と同等またはそれ以上の賃金を支払う必要があります。

業務範囲などについては出入国管理庁が公開している以下のページも参考にしてください。

出典:特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description) | 出入国在留管理庁

特定技能「電子・電磁情報関連産業」の取得方法

特定技能「電子・電磁情報関連産業」の取得方法

特定技能「電子・電磁情報関連産業」の取得方法は大きく以下の二つのルートに分かれます。

【①製造分野特定技能1号評価試験と日本語能力試験に合格するルート】
以下の2つの試験に合格すると、特定技能「電子・電磁情報関連産業」を取得できます。

1.製造分野特定技能1号評価試験
この試験は、「機械金属加工」「電気・電子機器組立て」「金属表面処理」といった複数の業務区分に応じて行われ、日本や海外でもCBT方式(コンピュータベースド方式)で受験が可能です。
学科・実技の両方で一定の水準を満たす必要があり、学科では65%以上、実技では60%以上の得点が求められるのがおもな要件です。2.日本語能力試験
以下のいずれかの試験に合格することが必要です。
・ 日本語能力試験(JLPT)N4以上
・ JFT‑Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)A2以上
上記のいずれかをクリアすることで、日本語運用能力が担保されます。出典:日本語能力試験 JLPT

【②技能実習2号を良好に修了した場合の移行ルート(試験免除)】

技能実習2号を「良好に修了」していると、①で示した「製造分野特定技能1号評価試験」と「日本語能力試験」の受験が免除されます。

なお、「良好に修了」とは、技能実習を2年10か月以上修了した上で、次のいずれかを満たす必要があります。

  1. 技能検定3級または技能実習評価試験(専門級)の実技に合格していること
  2. 出勤状況や技能習得状況、生活態度などを記載した評価調書により「良好に修了」と認められていること

特定技能「電子・電磁情報関連産業」の取得には、試験ルートと移行ルートという2つの方法があり、特に技能実習からの移行ルートを使えば、試験なしでスムーズにステップアップできます。

試験免除など特定技能・技能実習などへの全般的な内容は以下の法務省から公開されている資料を参考にしてください。

出典:特定技能 ガイドブック

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特定技能「電子・電磁情報関連産業」申請の必要書類

特定技能「電子・電磁情報関連産業」申請の必要書類

特定技能「電子・電磁情報関連産業」1号の申請の際に共通して必要となる書類は以下の通りです。

カテゴリ 必要書類
申請人に関する書類 製造分野特定技能1号評価試験合格証明書の写し

日本語能力証明書の写し(JLPT N4以上 または JFT‑Basic A2以上)

※技能実習2号修了者は試験免除

所属機関(受入れ企業)に関する書類 特定技能所属機関の誓約書
分野に関する書類 指定された業務区分に関する証明や説明資料
その他申請手続き関連書類 在留資格認定証明書交付申請書(別記第6号の3様式)およびそれに付随する申請人情報(写真や基本情報含む)

特定技能「電子・電磁情報関連産業」の申請では、受入れ企業側と申請人側双方に対して、制度に則った詳細な書類準備が求められます。

また、申請内容・企業の状況によって必要な申請書類が増減するため、詳しくは以下の出入国在留管理庁が公開しているページを参考にしてください。

出典:在留資格「特定技能」 | 出入国在留管理庁

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受け入れ企業の特定技能「電子・電磁情報関連産業」外国人採用時の注意点

受け入れ企業の特定技能「電子・電磁情報関連産業」外国人採用時の注意点

特定技能「電子・電磁情報関連産業」で外国人労働者を受け入れる際、受け入れ企業には以下の5つの重要な注意点があります。

注意点 概要
協議会加入が必須 受け入れ企業は、「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」、および2025年7月1日以降は「JAIM(工業製品製造技能人材機構)」への加入が法的に義務付けられている
協力義務への対応が必要 企業は協議会からの 指導や報告依頼、資料提出要求、現地調査への協力などに対応する義務がある
受け入れ人数には業界全体で上限あり ・2019年からの5年間で最大4,700人の外国人受け入れが上限

・都度変更される可能性があるため、随時確認が必要

転職可能なため競争が激化するリスクがある 特定技能外国人は転職が可能であるため、長期的には日本人と同等の採用難易度に至る可能性がある
早めの採用活動が極めて重要 受け入れの上限枠・転職の可能性を踏まえると、早めの採用活動が極めて重要

上記の点を確実に押さえて準備・対応すれば、特定技能制度を活用した外国人採用でスムーズかつ効果的に人材確保が進められるでしょう。

なお、協議会の概要および加入については以下のページ・資料を参照してください。

出典:製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会(協議会) (METI/経済産業省)

出典:製造業における 特定技能外国人材の受入れについて

特定技能「電子・電磁情報関連産業」の試験内容

特定技能「電子・電磁情報関連産業」の試験内容

特定技能「電子・電子情報関連産業」の試験は、学科+実技の両方で構成され、受験者の実務スキルと知識を幅広く評価する内容となっています。

試験の概要は以下の通りです。

項目 概要
構成 学科(30問)+実技(10問)

80分程度

試験時間 合計80分
形式 ・CBT(Computer-Based Testing)方式が基本で、テストセンターのコンピューターを使って受験

・ペーパーテスト形式が併用される場合もある

言語 日本語(ふりがな付き)
合格基準 学科:65%以上

実技:60%以上

受験レベル 技能実習2号修了者相当(技能検定3級)
申込手順 フォーム入力→メール案内→受験料支払い→受験票受領→受験場へ

上記の概要を事前に把握して外国人材にスムーズに案内できるようにしておくのが、安定した採用に大切な要素の一つです。

特定技能「電子・電磁情報関連産業」のまとめ

特定技能「電子・電磁情報関連産業」のまとめ

特定技能「電子・電磁情報関連産業」は、日本の製造業、特に電子部品や電気機器、情報通信分野における人手不足に対応するための重要な制度です。

特定技能「電子・電磁情報関連産業」を活用すればプリント基板の実装や電子機器の組み立て、金属表面処理など、現場で即戦力として活躍できる人材を海外から受け入れられます。

ただし、企業が採用を進めるにあたっては、いくつかの重要な注意点を押さえておく必要があります。まず、「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会(JAIM)」への加入が必須であり、協議会からの報告・調査への協力義務も発生します。

また、当分野の受け入れ上限は5年間で4,700人とされており、早期に動き出さなければ希望通りの人材確保が困難になる可能性があります。

さらに、特定技能人材は転職が可能である点にも注意が必要で、他社への流出リスクや採用競争の激化も想定されるため、待遇や労働環境の整備、キャリア形成支援などを含めた中長期的な視点での受け入れ体制構築が必要です。

本制度を効果的に活用するためには、試験制度や申請書類の整備に加え、制度運用上の注意点を踏まえた戦略的な採用活動が欠かせません。本記事を参考に、特定技能「電子・電磁情報関連産業」の活用が進めば幸いです。

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