就労ビザの審査期間はどのくらいかかる?在留期間や必要書類も解説

「就労ビザの審査期間はどのくらいかかるのだろう」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

厚生労働省が発表している「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」によると2023年10月時点で日本で働いている外国人労働者の人数は1,822,275人です。外国人労働者を受け入れる予定であれば、自社でも就労ビザの審査期間について把握しなければいけません。

就労ビザの有効期限を過ぎているのに日本へ滞在している外国人労働者を雇用した場合、企業の責任が問われる可能性があります。

本記事では、就労ビザの審査期間や在留期間、必要書類について解説します。本記事を読めば、就労ビザに関する実情を把握できるでしょう。外国人労働者を雇用する予定がある企業の方は、ぜひご覧ください。

就労ビザとは

就労ビザとは

就労ビザとは、日本で就業することを目的に発行された入国許可証です。就労ビザには制限付きの在留資格と無制限の在留資格があり、制限付きの在留ビザを持つ外国人労働者は、国から認められている活動をした場合にのみ報酬が受け取れます。

もし、国から認められていない活動をして報酬を受け取った場合、不法就労になってしまうため、雇用した企業側と外国人労働者に刑事罰が下されます。制限付きで在留資格が認められてかつ頻繁に使用される就労ビザは以下のとおりです。

頻繁に使用される就労ビザ
技術・人文知識・国際業務
技能
特定技能
高度専門職
企業内転勤
技能実習
経営・管理

また、無制限で就労できるビザは日本人の配偶者である外国人や日本人と同等の勤労義務や納税義務を10年以上果たしてきた外国人が取得できます。無制限の就労ビザを取得していた場合、どんな仕事に従事していたとしても不法就労にはなりません。

就労ビザについて
– 就労ビザ取得後の在留期間
– 在留期間が決まる条件

就労ビザ取得後の在留期間

外国人労働者が所有している就労ビザによって在留期間は異なります。在留期間とは、外国人労働者が日本に滞在し続けられる期間です。具体的な滞在期間は以下のとおりです。(2024年5月現在)

在留資格 在留期間
外交 外交活動の期間
教授、芸術、宗教、報道、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、技能 1年または3ヶ月、3年、5年
公用 15日または30日、3ヶ月、1年、3年、5年
高度専門職1号 5年
高度専門職2号 無期限
経営・管理 3ヶ月または4ヶ月、6ヶ月、1年、3年、5年
興行 30日または3ヶ月、6ヶ月、1年、3年
特定技能1号・技能実習1号 法務大臣が個別に指定する期間(1年以内)
特定技能2号 6ヶ月または1年、3年
技能実習2号、3号 法務大臣が個別にしているする期間(2年以内)

参照:在留資格一覧表|出入国在留管理庁

上記の表を参考にし、それぞれの外国人労働者の在留期間を把握しましょう。

就労ビザ取得後の在留期間について
– 在留期間が決まる条件

在留期間が決まる条件

在留期間は、さまざまな要素が組み合わさって決定します。基本的に外国人労働者の在留期間は法務大臣が決定しますが、納税や届出などの義務を果たしていなかった場合、在留期間が短くなる傾向にあります。

ほかにも、「在留期間への適合が不安視されている場合」や「安定して生計を維持する能力が低いと推測されている場合」の2つの要素のいずれかを満たしていると、短い在留期間で決定しやすくなるでしょう。

例えば、大企業で働いて実務経験を残している場合は、いきなり5年の就労ビザを取得できる場合があります。しかし、在留資格に関連する実務経験が少ない場合は、1年で許可される可能性が高いです。少しずつ実務経験を積み、在留期間を長期化できるように努力する必要があります。

また、問題行動をしたことがない外国人労働者であっても初回の許可や活動実績があまりない場合は、在留期間が1年になる場合が多いです。

できるだけ在留期間を長く得るためには、外国人労働者へ日本のルールや各種納税義務に関して教えていく必要があります。不法滞在にならないためにも、外国人労働者の在留期限を企業側も把握して更新のタイミングの確認が大切です。

就労ビザの審査期間

就労ビザの審査期間

就労ビザの審査期間は平均1ヶ月前後です。しかし、審査内容によって細かな審査期間が異なっており、以下の3つの項目に分類されます。

それぞれの審査期間を把握したうえで、外国人労働者の採用活動に努めましょう。

就労ビザの審査期間について
– 在留資格認定証明書取得の審査期間
– 在留資格許可申請を行進する審査期間
– 在留資格許可申請を変更する審査期間

在留資格認定証明書取得の審査期間

在留資格認定証明書取得の審査期間は約30〜90日です。在留資格認定証明書とは、外国人が日本に中長期滞在をする場合に用意するべき書類です。外国人が日本で長期滞在をする場合は、在留資格に該当していて日本でする活動や身分が偽りでないことを証明するために入国審査官へ証明する必要があります。

一般的に外国人労働者が日本で働く場合は、地方出入力在留管理官署へ在留資格認定証明書交付申請を提出する必要があります。申請後、在留資格が認定されて在留資格認定証明書の取得ができた場合は、日本大使館にて査証の発行が可能です。発行後、外国人労働者は在留資格認定証明書と査証を所持し、日本へ働きに来ることができます。

なお、在留資格認定証明書の申請は、本人・代理人・本人や代理人から依頼を受けた申請取次者が行えます。申請取次者は以下のとおりです。

申請取次者について
技能実習制度を行う公益財団法人の職員
外国人の法定代理人
弁護士または行政書士(管轄地方出入国在留管理局帳へ届け出ている)

在留資格認定証明書の提出を依頼する行政書士は、申請取次行政書士と呼ばれる出入国管理に関する研修を受けていなければいけません。上記の該当者が在留資格認定証明書の申請をしましょう。

在留資格許可申請を更新する審査期間

在留資格許可申請を更新する場合は、約30日前後かかります。在留資格許可申請を更新する際の具体的な流れは以下のとおりです。

在留資格許可申請を更新の流れ
1. 出入国在留管理局へ必要書類を提出する
2. 申請内容に問題がなかった場合は、出入国在留管理局からハガキが届く
3. 本人または取次者が出入国在留管理局へ行く
4. 新たな在留カードを受け取って、更新手続きを完了する

上記の更新手続きを参考にしたうえで、外国人労働者が在留資格許可申請の更新手続きができているのかをサポートすると安心できるでしょう。

在留資格許可申請を変更する審査期間

在留資格許可申請を変更する審査期間は種類によってばらつきがあるため、一概には言えませんが、標準処理期間として14〜30日が設定されています。在留資格許可申請を変更する場合は、居住する地方入国管理局へ書類を提出する必要があります。

在留資格許可申請の変更を審査している間は、審査委期間中もしくは在留期間満了中から2ヶ月経過するまでは日本へ継続的に滞在し続けることが可能です。

就労ビザの取得条件と必要書類

就労ビザの取得条件と必要書類

就労ビザは全ての人が取得できるわけではありません。また、就労ビザを取得するためにはさまざまな書類を用意する必要があります。ここで解説した内容を参考にし、就労ビザの取得条件と必要書類を把握しましょう。

就労ビザ取得について
– 就労ビザの取得条件
– 就労ビザ取得に必要な書類

就労ビザの取得条件

就労ビザの取得条件として、以下の4つが挙げられます。

就労ビザの取得条件
1. ビザの種類に適合する業務へ従事する
2. 日本人と同等以上の報酬を得られる
3. 業務に関連する学部や学科を卒業している
4. 就労先の企業に継続性や安定性がある

就労ビザを取得するためには、ビザの種類に適合する業務へ従事しなければいけません。報道関係のビザの申請をしているのに、法律関係の業務へ従事しようとしても就労ビザは取得できないでしょう。

就職する会社が日本人と同等以上の報酬を外国人労働者へ支払える経済状況でなければいけません。なかには、外国人労働者を法外な低賃金で雇用しようと考えている企業もあります。外国人労働者を低賃金で働かせる会社へ就職した場合は、就労ビザの取得は不可能です。

業務に関連する学部や学科を卒業している点も大切です。例えば、美容学校を卒業した外国人が経営・管理業務へ従事する場合は取得条件から外れます。美容学校を卒業した学生は美容関係の職場へ就職したうえで就労ビザを取得しましょう。

就労先の企業に継続性や安定性を求める必要があります。企業の経営状況が不安定な場合、外国人労働者に安定した報酬を支払えない可能性があるからです。とはいえ、会社の経営状況が赤字であった場合は、必ず就労ビザを取得できないわけではありません。

経営者が黒字にするためのビジョンを明確に説明できれば、就労ビザを取得できます。上記を参考にし、就労ビザの取得条件を理解しましょう。

就労ビザ取得に必要な書類

就労ビザの取得に必要な書類は会社によって異なりますが、どの会社でも共通して提出が求められる書類があります。就労ビザの取得に必要な書類は以下のとおりです。

就労ビザの取得に必要な書類
申請人の4×3センチの大きさの写真
返信用封筒または返信ハガキ
申請人の履歴書
職歴を証明する文書
採用・招へい理由書・職務内容説明書
卒業証明書

また、企業は規模別に以下の4つのカテゴリーへ分類されます。

カテゴリー1 上場企業や独立行政法人など比較的大規模な企業が当てはまる 勤務先の企業のカテゴリーや会社の経営状況を証明する書類
四季報の写しおよび日本の証券会社への上場を証明している書類
カテゴリー2 前年度の給与所得の源泉徴収額が1,000万円ある企業や個人などが当てはまる カテゴリ1と同様の書類
前年分の法定調書合計表
カテゴリー3 源泉徴収額が1,000万円未満の企業や個人 カテゴリーを証明する書類
外国人労働者の活動内容を証明する文書
企業の登記事項書
企業の決算文書の写し
企業の事業内容を明らかにする資料
法定調書合計表
直近の決算表の写し
役員報酬を定める定款の写しおよび役員報酬を決議した株主総会の議事録(日本法人の役員へ就任する場合)
地位や期間または支払われる報酬額を明らかにする文書(外国法人の日本支店へ転勤する場合)
カテゴリー4 カテゴリー1〜3に当てはまらない企業や個人 カテゴリー3同様の書類
前年分の源泉徴収票を提出できない理由を明らかにする書類
※新設企業の場合は、決算文書の代わりに事業計画書を作成する

比較的社会的信用のある大企業へ所属しているカテゴリー1や2の場合は、必要書類の準備にあまり時間がかかりません。しかし、カテゴリー3や4は必要書類が多いので、準備に時間がかかりやすいです。上記の内容から就労ビザ取得に必要な書類を理解しましょう。

企業側が把握しておく就労ビザに関する注意点

企業側が把握しておく就労ビザに関する注意点

就労ビザを発行するときや許可が降りたときに気をつけなければならない注意点があります。企業側は、以下の2つの就労ビザに関する注意点を把握しておきましょう。

それぞれの注意点に気をつけたうえで、外国人労働者の採用活動に努めてください。

就労ビザに関する注意点について
– 就労ビザの審査以上に書類作成にかかる時間
– 就労ビザの有効期限

就労ビザの審査以上に書類作成にかかる時間

企業の規模によって提出書類の数が変化することは往々にしてあるため、最低でも1ヶ月は書類準備期間を用意しておきましょう。

もし、初めての外国人雇用で書類の対応が困難な場合は、入管業務に関する知識が豊富な行政書士へ相談してください。なるべく早く行政書士へ相談すれば、スピーディーに書類作成を完了できます。

就労ビザの有効期限

就労ビザの有効期限には気をつけてください。就労ビザの有効期限が切れたまま働き続けると、従業員が不法滞在していることになり兼ねないからです。従業員が不法滞在のまま働き続けると当人が罰せられるだけでなく、企業側も不法就労助長罪に問われる恐れがあります。

不法就労助長罪に問われた場合、最大3年の懲役と300万円の罰金が科されるかもしれません。不法就労助長罪に問われるのは経営者のみでなく、店舗責任者や人事責任者も同様です。そのため、外国人労働者と就労ビザの有効期限のタイミングを共有しましょう。

ほかにも、以下の2つのポイントに気をつけることで不法就労助長罪に問われるリスクの軽減ができます。

在留カードの有効性を確認する
在留資格と資格外許可を確認する

外国人労働者を雇用する場合は、在留カードの有効性を確認することが大切です。在留カードを偽造して日本へ就労しに来ている外国人労働者も存在するからです。在留カードの有効性を見抜くためには、チェッカーアプリや法務局の照会サイトなどを活用してください。

また、在留資格と資格外許可の有無も確認しましょう。在留資格が留学や家族滞在の場合は、資格外許可を確認しないまま働かせてしまうと不法就労助長罪に問われます。上記の2つに気をつけたうえで、外国人労働者の雇用をしましょう。

就労ビザの審査期間まとめ

就労ビザの審査期間まとめ

就労ビザの審査期間は1ヶ月前後です。ただ、就労ビザの審査内容によって細かな期間が異なっています。また、就労ビザによって取得条件や必要書類も全然異なってくるでしょう。

本記事を参考にし、就労ビザの書類作成に時間がかかる点と有効期限に気をつける点に注意してください。