高度外国人材とは?受け入れのメリットや高度人材ポイント制を解説

高度外国人材とは専門的な知識や技術を持ち、ポイント制により優遇される外国人労働者のことです。正しい制度の理解と活用が、企業の国際競争力向上につながります。

本記事では、高度外国人材の定義や種類、ポイント制の仕組みについて解説します。優遇措置の内容や他の在留資格との違い、メリット・デメリットもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

高度外国人材とは?

高度外国人材とは?

高度外国人材とは、日本において専門的な知識やスキルを持ち、先端分野で活躍できる国外出身の人材を指します。イノベーションや経済成長を支える役割を果たし、企業の国際化にもつながる人材です。  

例として、高度外国人材にはITや医療などの専門分野で必要とされる、実務経験や学術的な知見を持つ方が多いです。厚生労働省の公式情報でも、企業側と外国人材の双方にとって安定した就労環境を整える意義が強調されています。

高い技術力や語学力を生かして、多様な現場で即戦力として期待される傾向があります。詳細や制度の背景については、以下の厚生労働省の関連ページを参考にしてみてください。

高度外国人材について|厚生労働省

高度人材ポイント制の概要

高度人材ポイント制の概要

高度人材ポイント制は、日本の経済成長に貢献する優秀な外国人材を積極的に受け入れるために2012年5月から開始された制度です。「学歴」「職歴」「年収」などの項目ごとにポイントを付与し、合計70点以上に達した外国人を「高度外国人材」として認定します。

高度外国人材として認定されると「高度専門職」の在留資格が付与され、様々な出入国在留管理上の優遇措置を受けることが可能です評価は「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3つの活動類型に分けて実施されます。

各項目の具体的な評価基準は以下の通りです。

評価項目 説明
学歴 大学卒業、修士、博士号などの学歴に応じて配点が変わる
職歴 職歴の長さや内容によりポイントが加算される
年収 一定の年収基準を超えると高ポイントになる
日本語能力 日本語能力試験のレベルに応じて加点される
研究実績・資格等 研究の質や国家資格の有無で特別加算がある場合もある

たとえば博士号取得者は30点、職歴10年以上の経営管理活動従事者は25点、日本語能力試験N1取得者は15点が加算されます。制度運用により、複合的な在留活動の許容や最長5年の在留期間付与、配偶者の就労許可など多様な優遇措置が提供されています。

高度人材ポイント制についてさらに詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてみてください。

高度人材ポイント制とは?|出入国在留管理庁

高度外国人材の種類

高度外国人材の種類

高度外国人材は、専門的な知識や技術を持つ外国人を対象とした在留資格制度で、「高度専門職1号」と「高度専門職2号」の2つに大別されます。それぞれの在留資格は活動内容に応じて「イ」「ロ」「ハ」の3つの区分に分かれており、合計6つの種類が存在します。

1号は初回申請者を対象とし、2号は1号で一定期間活動した実績のある人材がより柔軟な活動を行うための上位資格です。各区分における活動内容や対象となる職種の詳細は、以下の通りです。

種類 区分 対象分野 主な仕事内容 対象例
高度専門職1号 学術研究活動 大学教授、研究者 研究機関での研究・教育活動
高度専門職1号 専門的・技術的活動 ITエンジニア、医師、技術者 高度な専門知識を要する業務
高度専門職1号 経営・管理活動 外資系企業管理職、経営者 企業経営や管理業務
高度専門職2号 上記イ・ロ・ハの活動を包括 1号で実績を積んだ全ての人材 より自由度の高い活動が可能

1号の「イ」「ロ」「ハ」はそれぞれ異なる専門分野を対象としており、申請者の学歴や職歴に応じて適切な区分を選択します。2号は1号での活動実績が3年以上あり、かつ一定の条件を満たした場合に申請でき、在留期間や活動範囲において大幅な優遇を受けられます。

高度外国人材が得られる優遇措置

高度外国人材が得られる優遇措置

高度外国人材として認定された外国人は、一般的な在留資格では得られない様々な出入国在留管理上の優遇措置を受けることが可能です。優遇措置は「高度専門職1号」と「高度専門職2号」で内容が異なり、2号の方がより手厚い待遇が用意されています。

1号では在留期間の延長や家族帯同などの基本的な優遇が受けられ、2号では永住権に準ずる権利や活動制限の大幅な緩和が実現します。各在留資格で受けられる具体的な優遇措置の内容は、以下の通りです。

優遇措置 高度専門職1号 高度専門職2号
在留期間 最長5年 無期限(更新制)
永住許可要件の緩和 1号で3年以上活動後、条件満たせば申請可 到達時点で永住権に準ずる待遇
配偶者の就労 学歴・職歴要件を満たせば就労可能 要件を満たさなくても就労可能
親の帯同 一定条件下で可能 条件が大幅に緩和
家事使用人の帯同 年収1000万円以上等の条件付きで可能 より柔軟な条件で可能
入国・在留手続 優先処理、手続きの簡素化 1号より広範な優遇

優遇措置により、高度外国人材は日本での長期的なキャリア形成や安定した生活基盤の構築が可能になります。とくに2号では、事実上の永住権と同等の権利が得られるため、企業にとっても優秀な人材の長期確保につながる重要な制度となっています。

高度外国人材と他の在留資格を比較  

高度外国人材と他の在留資格を比較  

高度外国人材制度と他の主要な在留資格には、制度目的や対象人材、待遇面で大きな違いがあります。企業が外国人材を採用する際には、それぞれの特徴を理解して最適な制度を選択することが重要です。

ここでは、以下の項目別で高度外国人材と他の在留資格を比較していきます。

高度外国人材と他の在留資格の違い
  • 技能実習生との違い
  • 特定技能人材との違い
  • 技術・人文知識・国際業務との違い

技能実習生との比較

高度外国人材と技能実習生は、制度の根本的な目的が大きく異なります。技能実習制度は開発途上国への技能移転を通じた国際協力を主眼とし、習得した技術を母国で活用することが前提です。

求められる要件や在留期間、活動制限においても両制度には明確な違いがあります。各制度の主要な比較項目は以下の通りです。

比較項目 高度外国人材 技能実習生
制度目的 日本の成長産業を担う高度人材の受け入れ 技術や知識の移転による開発途上国支援
求める要件 ポイント制で学歴・職歴・年収等を厳格審査 年齢・健康・技能実習計画に基づく要件
在留期間 初回最長5年、延長・永住の道も開かれる 最長5年(分野により制限)、原則帰国
活動内容 研究・技術・経営など専門分野での即戦力 企業での技能研修・実習

技能実習生は、習得した技術を母国で活用する点に重点を置きます。高度外国人材は、技術革新や経営管理面の即戦力として長期的に活躍できることが特徴です。

技能実習制度に関する詳細は、厚生労働省のページを参考にしてみてください。

外国人技能実習制度について|厚生労働省

特定技能人材との比較

特定技能制度は2019年に創設された比較的新しい制度で、深刻な人手不足に対応するため即戦力となる外国人材の受け入れを目的としています。高度外国人材とは、対象分野や求められるスキルレベルで明確な違いがあります。

両制度の具体的な違いは以下の通りです。

比較項目 高度外国人材 特定技能人材
制度の目的 産業高度化・国際競争力強化 人手不足分野の労働力確保
人材に対する期待 研究・技術職などで即戦力・革新力を発揮 介護や建設等で実務オペレーションを支援
求める要件 ポイント制で学歴や年収等を厳格審査 技能試験や日本語試験の合格が主な要件
期間 5年(継続や永住可能性あり) 1号:最長5年 2号:更新可能な無期限

特定技能は日本国内の人手不足解消を目的とした制度で、指定の産業分野で一定の技能と日本語能力が求められます。高度外国人材は専門職への登用と活躍を前提とした制度で、入国時から多様な優遇措置と明確なキャリア設計ができる点が大きく異なります。

特定技能制度に関する詳細は、出入国在留管理庁のページを参考にしてみてください。

受入れ機関の方|出入国在留管理庁

技術・人文知識・国際業務との比較

「技術・人文知識・国際業務」は最も一般的な就労系在留資格の一つで、幅広い専門職での外国人雇用に活用されています。高度外国人材制度と対象となる職種や活動内容に重複する部分もありますが、優遇措置や在留期間などで大きな違いがあります。

審査基準や優遇措置の内容において、両制度には明確な差が設けられており、主な比較ポイントは以下の通りです。

比較項目 高度外国人材 技術・人文知識・国際業務
活動可能内容 幅広い研究・技術・管理分野 専門知識を活かした技術・人文分野、国際業務
求める要件 ポイント制の基準を満たすこと 大学卒業や実務経験などの基準
期間 初回最長5年、更新や永住優遇あり 1回につき1~5年(更新制)
優遇措置の有無 在留期間延長、家族帯同、他複数 基本的に一般就労ビザと同等

「技術・人文知識・国際業務」では配偶者の就労に制限がある場合が多く、高度外国人材なら配偶者の就労許可や親の帯同も認められます。永住申請も、高度外国人材は最短1年で申請可能になる場合があるのに対し、一般的な就労ビザでは10年の継続滞在が必要です。

企業にとって優秀な人材の長期確保を重視するなら、高度外国人材制度の活用がより効果的といえます。

技術・人文知識・国際業務に関する詳細は、出入国在留管理庁のページを参考にしてみてください。

在留資格「技術・人文知識・国際業務」|出入国在留管理庁

高度外国人材受け入れの5つのメリット

高度外国人材受け入れの5つのメリット

高度外国人材を受け入れれば、企業には以下のメリットがあります。

詳しく解説します。

5つのメリット
  1. 即戦力として活躍できる人材が見つかる
  2. 新しい技術領域にも対応できる
  3. 長く働ける仕組みがある
  4. 海外展開・多言語対応に強くなる
  5. 組織に新しい視点が加わる

1. 即戦力として活躍できる人材が見つかる

高度外国人材は専門知識や豊富な経験を持つため、配属後すぐに業務に順応し現場の期待に応えられます。従来の採用で生じやすいスキルミスマッチがほとんどなく、即応力は人手不足に悩む企業にとって大きなメリットです。

採用担当者は入社時から実務面で安心して任せることができるため、教育にかかるコストや期間の短縮にもつながります。新規プロジェクトや専門職ポジションにも即戦力として貢献しやすい点が評価されています。

人材の質と安定したパフォーマンス確保が同時に実現できるため、高度外国人材は貴重な存在です。多様な業務分野で活躍する姿勢が、日本企業の成長を促進する一因となっています。

2. 新しい技術領域にも対応できる

AIやIoT、再生医療など最先端の技術領域に精通した人材が多く、国内では希少な知見を現場へ持ち込むことが可能です。企業は高度スキルを戦略的に導入でき、成長領域への展開をよりスムーズに進められます。

高度外国人材は国際的な研究や開発をリードした実績があり、新分野開拓においても強みです。現場では未知の領域であっても柔軟に対応し、他メンバーへの知識共有促進も図られています。

新規事業や研究テーマの立ち上げ時には、先端分野の即戦力が活躍する場面が増えています。技術の変化が激しい時代において、高度外国人材は企業の競争力強化に欠かせません。

3. 長く働ける仕組みがある

高度外国人材には、条件を満たすことで長期にわたる在留や永住申請が認められる安心の制度が用意されています。本人も長期的なキャリア設計ができ、企業側も採用した人材を戦力として活用できます。

定着が進めば企業は人材育成への投資をしやすくなり、双方にとって成長機会が増える点がメリットです。在留優遇による転職や帰国リスクの低減もあり、人材不足対策や将来計画の見通しにもつながります。

若手からベテランまで幅広い年代が安心して働けるため、現場の活性化が促進されます。長期的な雇用関係の構築が生まれやすい点は、今後の企業経営にとって大きな強みです。

4. 海外展開・多言語対応に強くなる

高度外国人材は現地の文化をよく理解しているため、海外との連携や外国人顧客への対応力が格段に向上します。新しい市場への進出や国際取引の場面で、語学スキルや交渉力を発揮して企業のグローバル事業を支えています。

商品やサービスの多言語化、現地法人設立など多様な業務に貢献し、ビジネス展開拡大の基盤を築ける点がメリットです。日本人スタッフとの協業も円滑となり、多角的な視点で課題解決に取り組めるようになります。

取引先や顧客との文化的ギャップも埋めやすく、信頼関係の構築が進む点も大きな価値です。国際事業強化を目指す企業には、最適な人材といえます。

5. 組織に新しい視点が加わる

異なる文化や価値観を持つ高度外国人材が加われば、過去になかった多様なアイデアや論点が生まれます。新規事業や商品企画の段階では多様性が活き、従来の発想に捉われない提案が増加します。

多国籍なチーム編成が刺激をもたらし、社内風土がより柔軟になり時代の変化へ対応できるようになる点がメリットです。自発的な意見交換や幅広い情報収集も進み、外部変化への適応力が向上します。

組織の固定観念もなくなり、新しい価値が生まれることで競争力強化にもつながります。グローバルかつ多角的な視点が、企業の持続的成長を後押しする点も強みです。

高度外国人材受け入れの4つの注意点

高度外国人材受け入れの4つの注意点

高度外国人材の採用を検討する際には、以下の点に注意しましょう。

採用の成功と安定した受け入れを実現するために、上記の注意点を事前に把握し、リスク対策や適切な準備を進めていくことが重要です。詳しく解説します。

4つの注意点
  1. ビザ・在留資格の審査に通らない可能性がある  
  2. 複雑な手続きや法制度への理解が求められる  
  3. 採用競争が激しく、内定辞退もありうる  
  4. 業務内容の明確化が必須  

1. ビザ・在留資格の審査に通らない可能性がある

外国人材を雇用する際には、出入国在留管理庁による在留資格認定と、在外公館でのビザ発給の双方が必須です。仮に応募者が全ての法的条件をクリアしていても、提出書類の不備や職務内容と資格の不一致があれば、許可が下りないケースがあります。

審査が不承認となった場合は、期待していた採用自体が白紙に戻るリスクもあるため、企業側の計画にも影響します。優良な候補者が複数回申請しても、審査で不許可となる場合も多いです。

審査基準は非公開の側面もあり、必ずしも全ての申請が認められるとは限りません。採用を進める際は、不許可の可能性を見越した柔軟な人材計画を立てるのがおすすめです。

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2. 複雑な手続きや法制度への理解が求められる

在留資格やビザ取得には、多数の申請書類や証明書の準備が必要です。高度人材ポイント制度の場合は、詳細なポイント計算と根拠を証明する書類整備も求められます。

申請工程が煩雑な上に、法令が改正されるたびに手続きが必要となるため、常に最新情報を把握しておくことが大切です。社内担当者だけで手続きを進めるのが困難な場合には、専門家や行政書士の協力を検討しましょう。

制度の運用が変化する際は、企業規模を問わず柔軟な対応力が不可欠となります。企業体制や情報整備が不十分だと、申請自体が遅延し採用計画がずれるため、継続的なアップデートが必須です。

3. 採用競争が激しく、内定辞退もありうる

高度外国人材は、国内外でスキルや経験が求められるため、常に複数の企業から引き合いがある状態です。自社の給与水準や労働条件、キャリアパス等の提示が他社より魅力的でなければ、せっかく内定を出しても辞退される場合も珍しくありません。

採用過程でも、入社前に他社から好条件での再オファーを受けるリスクがあります。とくに専門職や最先端分野の場合は、転職エージェントを介して世界中の企業からスカウトが届く場合も多いです。

採用担当者は、募集段階から入社後のキャリア設計・働く魅力を明確に発信する必要があります。定着を見据えた育成制度や生活サポート体制も併せて構築し、内定を辞退するリスクを最小限に抑える戦略が必要不可欠です。

外国人採用にかかる具体的な費用はいくら?コストを抑えるコツも紹介

4. 業務内容の明確化が必須

高度外国人材が従事できる業務は、取得した在留資格ごとに厳格に定められています。職務内容が曖昧だったり申請時と実態がズレていたりすれば、在留資格違反・不法就労とみなされるおそれがあるため注意しましょう。

採用時には、職務内容明細の詳細な提示が不可欠です。就労開始後も職務内容の変更が生じた場合には、毎回適切な手続きをとる必要があります。

社内で在留資格と職務内容が合っているか常に確認し、齟齬や誤解を生まないコミュニケーションを徹底することが大切です。適切な労働環境を作れば、本人のパフォーマンスやモチベーション向上にもつながります。

高度外国人材のまとめ

高度外国人材のまとめ

高度外国人材の受け入れには、ビザ・在留資格審査の不確実性や複雑な手続き、激しい採用競争といった企業側の懸念が存在します。業務内容の明確化や法制度への理解不足によるトラブルリスクなど、事前準備や専門知識が求められる課題も少なくありません。

一方で、即戦力となる専門人材の獲得、新技術領域への対応力、長期的な雇用安定性といった大きなメリットが期待できます。海外展開や多言語対応の強化、組織への多様な視点の導入など、企業の成長と競争力向上に直結する価値を提供します。

注意点を適切に管理し、メリットを最大限に活用するためには、制度理解と受け入れ体制の整備が不可欠です。

ぜひ本記事を参考にして、自社の人材戦略に高度外国人材制度を効果的に取り入れてください。