「外国人採用にはどれくらいの費用がかかるのだろう」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。厚生労働省が公表している「外国人雇用状況」の届出状況まとめによると、2020年10月時点で日本に外国人労働者は1,724,328人おり、前年度と比較して65,524人も増加しています。
今後もさらに外国人労働者が増加することが予測されるでしょう。本記事では、外国人採用にかかる具体的な費用やコストを抑えるコツを紹介します。
本記事を読めば、外国人を採用するための準備がしやすくなるでしょう。外国人採用に必要な費用を知りたい方は、本記事を参考にしてください。
外国人採用費用が変わるさまざまなケース
外国人採用費用は在留資格の有無や在住地、新卒あるいは中途採用、首都圏での採用もしくは地方での採用など、さまざまな状況によって変動します。例えば、首都圏で採用をした場合には、物価が高いため、地方よりも高い人件費を支払う必要があります。
その一方で、地方は首都圏よりも人件費が低いので、安い費用での外国人採用が実現可能です。外国人を雇用する際は、従業員が置かれた状況によって費用が大きく変動することを事前に把握しておきましょう。
海外在住の外国人を採用する費用
海外在住の外国人を採用する場合は約100〜150万円の費用がかかります。具体的な費用の内訳として、以下の5つが挙げられます。
海外在住の日本人を採用する際に必要な費用を把握し、正しい判断ができるようにしましょう。
- 具体的な費用の内訳
- – 外国人人材を紹介してくれた会社への紹介手数料
– 日本語教育費用
– 在留資格申請費用
– 日本への渡航費用
– 日本での生活費用
外国人人材を紹介してくれた会社への紹介手数料
人材会社から紹介してもらった場合は、外国人労働者の年収の20〜30%を人材会社へ支払うのが一般的です。例えば、年収500万円の場合は、100〜150万円を人材会社へ支払わなければいけません。
人材紹介会社の多くは成果報酬型を導入しているため、自社が求める外国人労働者を採用できた場合にのみ報酬を支払う必要があります。
日本語教育費用
外国人が日本で働くためには、日本語を学ばなければいけないため、会社が日本語教育費用を負担する必要があります。日本語教育費用の相場は約10〜15万円です。
ただ、日本で働くことを検討している外国人はすでに日本語を話せる場合もあるため、日本語教育費用を支払わなくてもよい場合があります。本人とどれくらい日本語教育を受けたいのかを相談して決めましょう。
在留資格申請費用
外国人労働者が日本で働くためには、会社が在留資格申請費用を支払う必要があります。在留資格申請するために必要な書類は以下のとおりです。
在留資格申請費用 |
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卒業証明書(約500円) 在職証明書(1,000〜2,000円) 郵便切手・速達料金(1,000〜2,000円) 書類の翻訳(4,000〜6,000円) 健康診断書(約10,000円) |
在留資格申請を自社で申請した場合は1〜2万円、業務委託した場合は3〜4万円かかります。在留資格の申請手続きは複雑なため、行政書士へ業務委託するのが一般的です。
日本への渡航費用
海外在住の外国人を採用した場合、日本への渡航費用を支払わなければいけません。会社の方針によって日本への渡航費用が大きく異なります。東南アジアへ格安航空券で渡航した場合、往復で4〜8万円かかることが多いでしょう。
一方で海外在住の外国人が就職するために日本へ渡航した場合、東南アジアでは2〜5万円かかるのが一般的です。もし、空港から居住地まで遠い場合は、1万円近く渡航費用がかかる場合があります。
日本での生活費用
日本での生活費用では、初月の家賃・敷金・礼金などを用意する必要があります。例えば、家賃が5万円で敷金・礼金も同額かかる場合は、15万円です。
日本で快適に生活するために携帯電話の契約や銀行口座の開設手続きも必要なので、さらに1〜2万円はかかるでしょう。
日本在住の外国人を採用する費用
日本在住の外国人を採用する場合があります。日本在住の外国人を採用した場合の費用相場は、80〜100万円です。日本在住の外国人を採用すると、以下の3種類の費用がかかります。
日本在住の外国人を採用する予定がある方は、本項を参考にしてください。
- 日本在住の外国人を採用する費用の内訳
- – 日本在住外国人を紹介してくれた会社に紹介手数料
– 健康診断費用
– 在留資格変更申請費用
日本在住外国人を紹介してくれた会社に紹介手数料
日本在住の外国人を人材紹介会社へ紹介してもらった場合は、人材紹介会社へ人材の年収の20〜30%を紹介手数料として支払う必要があります。
海外在住でも日本在住でも外国人を採用する際に支払うべき手数料は変わりません。
健康診断費用
日本在住の外国人を採用した場合でも、約1万円の健康診断費用がかかります。労働安全衛生規則法第43条によって、労働者の健康診断の発行が義務付けられているためです。
法律を遵守したうえで外国人を採用するためにも、健康診断費用は必ず用意しましょう。
在留資格変更申請費用
日本在住の外国人を採用する場合は、在留資格変更申請費用が発生します。新たな職業へ就業する場合、在留資格変更の申請をしなければいけません。
在留資格変更申請では複雑な手続きをしなければいけないので、行政書士へ依頼するのが一般的です。在留資格変更申請費用の相場は、6〜10万円かかります。
外国人人材の採用コストを抑える2つの方法
外国人人材を採用するためには多額のコストがかかります。
外国人人材の採用コストを抑えるために以下の2つの項目に分類して紹介するので参考にしてください。ここで紹介した内容を基にコストを抑えつつ、効率的に外国人人材の採用に取り組みましょう。
- 外国人採用コストを抑える方法
- 1. 国内での採用の場合
2. 現地での採用の場合
1. 国内での採用の場合
国内での採用活動でコストを抑える方法として、以下の6つが挙げられます。
国内での採用活動でコストを抑える方法 |
1. ハローワークを利用する 2. 日本語学校を訪問してスカウトする 3. 外国人ネットワークの利用で人材を探す 4. 助成金や補助金を活用する 5. 自社内での研修・教育を実施する 6. 採用プロセスを効率的に行う |
国内で採用活動をする場合は、ハローワークを利用すれば、コスト削減につながります。ハローワークでは公的機関が運営するサービスなので、求人を掲載したとしても広告料金が一切かからないからです。
また、会社と同じ地域に住んでいる外国人を採用できるため、新しい住居を用意する必要はありません。
事実、ハローワークの外国人雇用サービスコーナーを利用して就職した件数は約1.1万人です。ハローワークで職探しをしている外国人も一定数います。少しでも費用を抑えたい方は、ハローワークを利用しましょう。
参照:公共職業安定所(ハローワーク)の主な取組と実績|厚生労働省
日本語学校を訪問してスカウトする方法もあります。日本語学校に通っている外国人はある程度日本語が理解できる人が多いので、日本語教育にかかる費用の削減につながります。日本語学校内のキャリアセンターへ求人を掲載すれば費用はかからず、多くの人材の採用につなげられるでしょう。
外国人ネットワークを活用すれば、求職者と企業のマッチングが実現できます。とはいえ、外国人ネットワークにもさまざまな種類があるため、自社に適切なサイトを利用するとよいでしょう。
例えば、YOLO WORKを活用すれば、226ヶ国26万人の外国人に対して求人を掲載でき、応募があれば自己紹介動画から人柄を把握できます。WORK JAPANを活用すると、外国人が日本で生活するうえで必要なサービスの提供も実施しています。外国人ネットワークを活用する場合は、自社にマッチした人材を採用するために適切なサイト選びが大切です。
日本では外国人採用に関するさまざまな助成金や補助金制度を用意しています。トライアル雇用助成金制度を活用した場合、雇用前の試用期間に対して交付され、1人当たり最大月額4万円×3ヶ月分かかります。助成金や補助金制度を申請できる条件が定められているため、事前に確認したうえで使用できる制度は活用しましょう。
自社内での研修・教育を実施すれば、日本語や業務知識に関するトレーニングを外部機関へ依頼する必要がなくなるため、リーズナブルな価格での教育が実施できます。採用プロセスを効率的にすれば、さらなる人件費削減へつながります。
Web面接を導入すれば、会社まで来るのにかかる交通費を支給する必要がありません。さまざまな方法を実践すれば、国内での採用活動にかかる費用を大幅に削減できます。上記の方法を参考にし、コストを抑えつつ優秀な外国人人材を採用できるように努めましょう。
2. 現地での採用の場合
現地での採用においてもコストを抑える方法はあります。現地での採用でコストを抑える方法として、以下の3つが挙げられます。
国内での採用活動でコストを抑える方法 |
1. SNSで求人応募する 2, 人材紹介会社を活用する 3. 自らスカウトする |
現地で外国人を採用したい場合は、SNSを活用しましょう。採用活動にSNSを活用すれば、求職者の人柄を理解しやすくなったり、費用をかけずに求職者へアプローチができるからです。外国人採用に活用するべきSNSは「Facebook」「Linkedln」「X(旧ツイッター)」「WeChat・Weibo」の4つです。
Facebookは、インドやブラジル、インドネシアなど多くの外国人が利用しているSNSです。Facebookで企業ページを作成すると、業務内容や労働条件などを記載して求人の募集ができます。Facebookのグループにて「Japan Job」と検索した場合、外国人求職者のFacebookグループを見つけられ、就職志望度が高い参加者へのアプローチが可能です。
Linkedlnは、アメリカや中国、イギリスで使用される傾向にあるSNSです。ビジネスを目的に使用しているユーザーが多いので、スカウトや転職活動で利用している人を見つけられる可能性があります。スカウト機能を活用すれば、優秀な人材へアプローチが可能です。
Xは日本以外でも、アメリカやイギリス、サウジアラビアなどに利用者が多いSNSです。さまざまな言語で情報発信すれば、多国籍からの流入もできます。Wechat・Weiboは、中国人に多く利用されているSNSです。
ただ、WeChat・Weiboは偽アカウントが多いので、有料で法人アカウントで情報発信しましょう。中国は人口数が多く日本から近いため、日本で働きたいと思っている人材も多くいると予想できます。
人材紹介会社を利用すれば、効率的に外国人人材を採用してもらえるため、時間の節約につながります。ただ、採用した人材の年収の20〜30%の報酬を支払わなければいけないので注意が必要です。
外国人人材を現地の学校へ訪問して自らスカウトする方法もあります。自らスカウトすれば、ミスマッチがしにくくなります。それぞれのコストを抑える方法を実践し、効率的に現地での採用活動を進めましょう。
外国人人材を雇用する際の注意点
外国人人材を雇用する際には、さまざまなポイントに注意しなければいけません。
具体的には、以下の2つに注意が必要です。それぞれの注意点に気をつけたうえで、外国人人材の雇用をしましょう。
- 外国人採用で注意するポイント
- – 外国人採用者への給与
– キャリア採用の場合は難易度が高い
外国人採用者への給与
外国人人材を雇用する際は、採用者への給与面に注意しなければいけません。外国人労働者であっても労働基準法において、最低賃金以上の給与を支払うことが求められます。(参照:労働基準法|e-Gov法令検索)
もし、契約時に最低賃金を下回る金額で成立していた場合でも、法的に無効になります。外国人人材を最低賃金を下回る金額で働かせた場合、以下の罰則を受けなければいけません。
管理団体と受け入れ企業は一定期間、外国人労働者の受け入れを停止する
上記の罰則を受けないためにも、外国人採用者に対しては法律で定められた最低賃金以上の給与を支払いましょう。
キャリア採用の場合は難易度が高い
本記事を読んでいると、費用削減のために日本在住の外国人を採用したいと考えている方も多いでしょう。しかし、日本在住キャリアの外国人を採用するのは困難です。日本語ができる方や高いスキルを保有している方はどの企業も欲しいため、必然的に競合が多くなります。
しかし、現地在住の外国人の場合は、母数が多いため、競合が少なく採用しやすい傾向があります。日本在住と現地在住の外国人の採用にはそれぞれメリットとデメリットがあるのです。
競合企業に負けないほどの魅力を打ち出して日本在住の外国人を採用するか、現地在住の外国人をターゲットに採用活動を始めるのかを明確にしましょう。
外国人採用費用のまとめ
外国人を採用するにしても日本在住か、現地在住かで支払う費用は大きく異なります。日本在住の外国人は80〜100万円かかりますが、海外在住の場合は100〜150万円もかかります。
ただ、外国人人材の採用コストを抑える方法を実践すれば、大幅な費用削減が実現可能です。本記事を参考にして不必要な費用の削減に努め、自社に適した優秀な人材を採用できるようにしましょう。