特定技能制度での外国人材受け入れを検討中、「協議会」への加入義務や手続き、その後の運用に不安を感じていませんか?
特定技能とは、国内で人材確保が困難な分野で即戦力となる外国人材を受け入れるための在留資格制度です。受け入れ機関にとって、分野ごとの協議会への加入は義務であり、その後の継続的な義務や活用が成功の鍵を握ります。
出典:特定技能制度
この記事では、協議会の概要から加入方法、費用、そして加入後の義務と活用法までを網羅的に解説します。これを読めば、協議会に関する疑問が解消し、外国人材の適切な受け入れと定着を実現するための道筋が見えてくるでしょう。
特定技能外国人人材紹介会社おすすめ10選!選び方や費用相場を解説
特定技能の協議会とは?
特定技能制度における協議会は、各特定産業分野を担当する省庁が設置する機関です。特定技能外国人を受け入れる機関は、分野ごとに定められた協議会への加入が義務付けられています。
協議会は、受入れ機関や所管省庁、業界団体、登録支援機関などで構成されており、例えば介護やビルクリーニング分野は厚生労働省、建設や航空分野は国土交通省が担当しています。
協議会の主な目的は、特定技能制度が適切に運用されるようにすることと、各構成員が連携して各地域の事業者が特定技能外国人を受け入れられるようにすることです。特に、人手不足が深刻な産業分野への外国人材の適切な配置を促進します。
協議会の共通する活動内容は、以下のとおりです。
- 特定技能制度の周知
- 法令遵守の啓発
- 就業構造や経済情勢の変化に関する情報収集と分析
- 地域ごとの人手不足状況の把握と分析
- 大都市圏への集中を避けるための対策の検討と調整
- 受入れが円滑かつ適正に行われるために必要な情報共有や協議
これらの活動を通じて、外国人材が特定の地域に集中することなく、人材を必要としている地域や事業所に適切に配置されるよう推進します。
特定技能外国人を受け入れるためには、協議会への加入が必須ですが、手続きに時間がかかる場合があります。在留資格申請に必要な「協議会入会証」をスムーズに取得するため、申請の3か月以上前に加入申請を行うのがおすすめです。書類の不備で再提出を求められる可能性もあるため、余裕をもって手続きを行うようにしましょう。
工業製品製造業分野の協議会に関する詳しい情報は、経済産業省のWebサイトで確認できます。
特定技能とは?技能実習との違いや1号・2号の特徴、採用方法を解説
特定技能の協議会への加入要件
多くの特定技能分野では、協議会への加入情報は「企業」または「受入れ機関」向けに提供されています。しかし、分野によっては個人と法人で申請方法が異なる場合があります。
特に農業分野の特定技能協議会では、個人用と法人用の申込フォームが別々に用意されています。また漁業分野では、特定技能外国人を雇用する漁業者は「1号構成員」として協議会に認められます。このように、個人事業主が多い分野では、個人と法人で手続きや構成員の扱いが区別されることがあります。
特定技能の協議会に加入するには、以下の書類の提出や情報の入力が必要です。
- 誓約書の提出
- 申請システムへの入力と書類のアップロード
- 特定の様式での申請
- 郵送または電子メールでの提出
- 送付先の地域による違い
- 漁業分野は、別途加入申請書と関係書類を「2号構成員」に提出
また、協議会への加入にかかる費用は、分野によって大きく異なります。建設業分野以外の特定技能協議会への加入は、原則として無料です。ただし、建設業分野では建設技能人材機構(JAC)への加入が必要で、年会費と受入負担金が発生します。
年会費は正会員が36万円、賛助会員が24万円です。受入負担金は月額12,500円から20,000円です。建設業分野への加入は申請から入会まで約1か月かかるため、早めの手続きが重要です。今後、他の分野でも協議会加入費が必要になる可能性があるため、定期的に最新情報を確認することをおすすめします。
特定技能の協議会に必要な費用
特定技能外国人を受け入れる際、分野ごとに協議会への加入が義務付けられていますが、必要な費用は分野によって大きく異なります。入会費・年会費に関してですが、建設業以外の分野では、特定技能協議会への加入費は原則として無料です。ただし建設業では、建設技能人材機構(JAC)への加入が義務付けられており、年会費と受入負担金が発生します。
JACの年会費は以下の通りです。
- 正会員:36万円(団体によって金額が異なる場合があります)
- 賛助会員:24万円
建設技能人材機構(JAC)では、年会費に加えて12,500円〜20,000円の受入負担金が必要です。これらの費用は建設業特有のもので、現時点では他の分野では発生しません。しかし、将来的には他の分野でも協議会加入費が発生する可能性があるため、対象分野の協議会の最新情報を定期的に確認するようにしましょう。
特定技能の分野別の協議会一覧
特定技能に関する協議会は、会員間の情報共有と連携を通じて、特定技能外国人の適切な受入れと保護を促進し、関係を強化することを目的としています。特定技能外国人を受け入れる事業者は、原則として、該当する分野の協議会への加入が義務付けられています。
以下に、各分野の協議会の一覧を示します。建設業分野以外の特定技能協議会への加入は、原則として無料です。ただし建設業分野では、建設技能人材機構(JAC)への加入が必要で、年会費と受入負担金が発生します。
今後、他の分野でも協議会加入費が必要となる可能性があるため、対象分野の協議会の最新情報を定期的に確認してください。
分野 | 協議会名 | 管轄省庁 |
---|---|---|
介護 | 介護分野における特定技能協議会 | 厚生労働省 |
ビルクリーニング業 | ビルクリーニング分野特定技能協議会 | 厚生労働省 |
建設業 | 建設技能人材機構 | 国土交通省 |
造船・舶用工業 | 造船・舶用工業分野特定技能協議会 | 国土交通省 |
宿泊業 | 宿泊分野特定技能協議会 | 国土交通省 |
航空業 | 航空分野特定技能協議会 | 国土交通省 |
自動車整備業 | 自動車整備分野特定技能協議会 | 国土交通省 |
外食業 | 食品産業特定技能協議会 | 農林水産省 |
飲食料品製造業 | 食品産業特定技能協議会 | 農林水産省 |
農業 | 農業特定技能協議会 | 農林水産省 |
漁業 | 漁業特定技能協議会 | 水産庁 |
素形材・産業機械製造・電気電子情報製造業 | 製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会 | 経済産業省 |
特定技能の協議会の分野別の加入方法
特定技能外国人を受け入れる企業は、特定技能の協議会への加入が義務付けられています。ここでは、分野ごとの具体的な加入方法を解説します。
まず、初めて特定技能外国人を受け入れる企業は、地方出入国在留管理局に在留資格認定証明書交付申請などを行う際、「特定技能外国人の受入れに関する誓約書」の提出が必要です。この誓約書を提出した後、各分野の協議会への加入手続きを進めます。
多くの分野では、特定技能外国人を受け入れた日から4ヵ月以内に協議会への加入を完了させなければなりません。ただし、建設分野では、特定技能外国人の在留資格申請前に加入しなければならないため、注意が必要です。
|
介護分野
- 初めて1号特定技能外国人を受け入れる事業者は、まず地方出入国在留管理局へ「特定技能外国人の受入れに関する誓約書」を提出する必要があります。
- 次に、介護分野の特定技能協議会事務局のオンラインシステムで、必要な情報を入力し、添付書類をアップロードしてください。
- 全ての手続きが完了すると、申請した法人に「協議会入会証明書」が交付されます。
- 2回目以降に受け入れる際は、地方出入国在留管理局に誓約書と一緒に、以前交付された「協議会入会証明書」の写しを提出します。
- その後、初回と同様に協議会事務局の申請システムで必要な情報を入力し、添付書類をアップロードしてください。この場合、「協議会入会証明書」は再度交付されません。
- どのケースでも、地方出入国在留管理局へ誓約書を提出した後、該当する特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に、協議会事務局への入会申請の手続きが必要です。
介護分野に関する詳しい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
出典:介護分野
建設分野
- 建設分野で特定技能の外国人労働者を受け入れる企業は、建設技能人材機構(JAC)に直接または間接的に加入しなければなりません。
- JACへの加入申請には、年会費と受入負担金という費用が発生します。
- 申請から加入まで約1か月を要するため、特定技能外国人労働者の在留資格申請に間に合うよう、早めの手続きが大切です。
建築分野の詳しい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
出典:建設分野
造船・舶用工業分野
- まず、企業が造船・舶用工業事業者に該当するかどうかの確認を受ける必要があります。
- 次に、様式第1号の確認申請書と様式第5号の加入申請書に必要事項を記載してください。
- 記載した書類は、「国土交通省海事局船舶産業課長」宛てに提出してください。
- 申請内容に問題がなければ、様式第2号の確認通知書が交付され、手続き完了となります。
造船・舶用工業分野に関する詳しい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
出典:造船・舶用工業分野
ビルクリーニング分野
- ビルクリーニング分野の協議会への加入は、厚生労働省のWebサイトからオンラインで申し込むことができます。
- 登録情報の変更、登録の取り消し、再交付の申請も、同様にオンラインで手続きが可能です。
- 在留資格を申請する際は、「ビルクリーニング分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書」の提出が必要です。
ビルクリーニング分野に関する詳しい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
出典:ビルクリーニング分野
宿泊分野
- 宿泊分野の協議会への加入は、令和6年5月から紙媒体またはオンラインでの申請が選択可能になる予定です(2024年5月31日現在、オンライン申請システムは準備中)。
- 紙媒体で申請する場合は、国土交通省の公式サイトから申請書をダウンロードし、必要事項を記入してください。
- 記入済みの申請書類は、「観光庁観光産業課」宛に郵送してください。
- 協議会の構成員であることの証明は、観光庁が発行する入会通知書をもって完了となります。
宿泊分野に関する詳しい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
出典:宿泊分野
航空分野
- 航空分野の協議会への参加を希望される方は、まず国土交通省の公式サイトから申請書類をダウンロードしてください。
- 申請書類に必要事項を記入し、電子メールに添付して協議会事務局へ送信してください。
電子メールでの送信が難しい場合は、以下の宛先へ郵送することも可能です。
- 空港グランドハンドリング関連:航空ネットワーク企画課 宛
- 航空機整備関連:安全政策課乗員政策室 宛
航空分野に関する詳しい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
出典:航空分野
自動車整備分野
- 自動車整備分野の協議会に参加するには、必要な書類を国土交通省の公式サイトからダウンロードしてください。
- 書類の提出先は地域によって異なります。地方運輸局の送付先一覧で、該当する窓口を確認して提出してください。
- 申請内容に問題がなければ、構成員資格証明書が交付され、手続きは完了です。
自動車整備分野に関する詳しい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
出典:自動車整備分野
食品産業分野
- 外食産業と食品製造業は、同じ「食品産業特定技能協議会」に所属しています。
- 協議会への加入申請は、農林水産省の公式サイトにある申請フォームから行います。
- 数日中に協議会事務局からメールが届きますので、誓約書の写しを添付して返信すれば、手続きは完了です。
食品産業分野に関する詳しい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
出典:食品産業分野
農業分野
- 農業分野の協議会への加入を希望する場合は、農林水産省の公式サイトにある加入申請フォームから申し込んでください。
- 申請フォームは個人用と法人用で分かれているため、選択を間違えないように注意してください。
- 事務局が申請内容を確認し、問題がなければ、1〜2週間程度で「加入通知書」がメールで送られます。
農業分野に関する詳しい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
出典:農業分野
漁業分野
- 漁業分野において特定技能外国人を受け入れる機関は、協議会の1号構成員として自動的に認められます。
- 加入申請書に必要事項を記入し、関係書類を添付して2号構成員に提出すれば、手続きは完了します。
漁業分野に関する詳しい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
出典:漁業分野
製造業分野
- 素形材・産業機械製造・電気電子情報の3分野は「製造3分野」と呼ばれ、「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」が設置されています。
- 他の分野では特定技能外国人の在留申請後・入社後4ヵ月以内の協議会加入が認められていますが、製造3分野は在留申請の前に加入を済ませる必要があります。
- 入会手続きには一定の時間を要するため、計画的に準備を進めることが重要です。
- 加入申請は経済産業省の公式サイトから行うことができます。
製造業分野に関する詳しい情報を知りたい方は、こちらをご覧ください。
出典:製造業分野
特定技能の協議会に入会した後にすべきこと
特定技能の協議会への参加は、外国人労働者を受け入れる企業にとって、単なる始まりに過ぎません。参加後もメンバーとして継続的に義務を果たし、協議会が提供するサポートやネットワークを積極的に活用することで、外国人材の円滑な受け入れと長期的な定着を促進することが重要です。
協議会に参加した企業は構成員として、以下の責任と義務を果たす必要があります。
- 定期会合への出席
- 労働・生活状況の定期報告
- ガイドライン・倫理規定の遵守
- 支援計画・人材育成プログラムの報告
特に重要なのはモニタリング報告の提出です。これを怠ると、制度への信頼が損なわれ、最悪の場合、特定技能外国人の受け入れ停止や資格取り消しなどの厳しい措置が取られる可能性があります。
協議会に参加するメリットの一つは、充実したサポート体制です。特定技能制度は頻繁に変更や追加情報が出るため、協議会を通じたサポートは非常に役立ちます。また、特定技能制度では採用よりも定着が成功の鍵です。協議会を有効に活用することで、外国人材が安心して長く働ける環境を構築しやすくなります。
文化や習慣の違いによる誤解が放置されたり、孤立状態が続いたりといった定着支援の失敗は、協議会を通じて他社の事例や支援策を学ぶことで回避できます。協議会のネットワークを活用すれば採用した外国人材が安心して働き続けられる環境を構築することが可能です。協議会との関わりは単なる事務手続きではなく、外国人材を活かすための協働体制と捉え、継続的な参加と情報活用が重要です。
特定技能外国人の住居確保ガイド|部屋の広さや責任の所在まで解説
特定技能の協議会のまとめ
この記事では、特定技能の協議会について解説してきました。
特定技能の協議会は、外国人材の適切な受け入れと定着を支援する重要な機関です。受け入れ企業は分野ごとに協議会への加入が義務付けられており、在留資格の申請前に加入が必要な場合もあるため、誓約書を提出したら速やかに手続きを行い、余裕をもって申請することが重要です。
加入後は、定期的な会合への出席や労働・生活状況の報告、ガイドラインの遵守といった義務を継続的に果たす必要があります。協議会は最新情報の提供、定着支援のノウハウ、他社の事例の共有など、豊富なサポートを提供しています。これらの支援を積極的に活用し、外国人材が安心して長く働ける環境を築きましょう。
受け入れ企業は本情報を参考に協議会へ加入し、有効活用してください。加入前後の手続きや義務を忘れないように注意しましょう。