外国人留学生をアルバイトとして雇用する時の注意点や雇用保険の扱いを解説

「外国人留学生をアルバイトとして雇用したいけれど、雇用保険の扱いや労働時間制限、禁止業種など、複雑なルールが多くて不安…」と感じていませんか? 人手不足解消や国際化に繋がる一方で、企業側が押さえるべき点は多岐にわたります。

特に重要なのが資格外活動許可の理解です。これは、留学の在留資格を持つ外国人がアルバイトをする際に必須の許可で、日本に滞在する外国人が本来の在留資格で認められていない活動を行うために必要となります。

留学生の場合、学業への支障を考慮し、原則として週28時間以内のアルバイトに限り許可されています。この許可は、在留カードの裏面にある「資格外活動許可欄」で「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と記載されているかを確認することで把握できます。

もし資格外活動許可を得ていない留学生を雇用した場合、企業は不法就労助長罪に問われ、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があるため、採用前に必ず確認が必要です。

この記事では、外国人留学生アルバイトの雇用保険の有無や雇用するメリット、具体的な注意点、そして企業側の対応について詳しく解説します。本記事を通じて、適切な雇用管理の知識を深め、安心して外国人材を迎え入れましょう。

出典:法務省 出入国在留管理庁 資格外活動許可について

資格外活動許可とは?制度の内容から申請方法まで分かりやすく解説

外国人留学生アルバイトを雇用する時の3つの注意点

外国人留学生アルバイトを雇用する時の3つの注意点

外国人留学生をアルバイトとして雇用する際には、以下3つの注意点を把握しておく必要があります。

  1. 労働時間の上限を超えてはいけない
  2. アルバイトとして業務出来ない業種
  3. 罰則を把握する

1. 労働時間の上限を超えてはいけない

外国人留学生が日本に滞在する主な目的は学業であるため、アルバイトの労働時間には制限が設けられています。これは学業への支障を考慮し、労働時間の上限を定めているためです。

通常期間 1週間の労働時間は合計28時間以内
長期休暇期間(夏休みなど) 1日の労働時間は8時間以内、かつ1週間で合計40時間以内

18歳以上であれば、労働時間帯に制限はなく、深夜のアルバイトも可能です。企業は、留学生が他のアルバイトを掛け持ちしている可能性があるため、他社の労働時間を確認し、合計の労働時間が上限を超えないように調整する必要があります。

2. アルバイトとして業務出来ない業種

外国人留学生がアルバイトをする際、法律で働くことが認められていない業種があります。これは、出入国管理法施行規則第19条5項1号に定められています。具体的には、以下の風俗関連の仕事は許可されていません。

  • 風俗営業や店舗型性風俗特殊営業を行っている場所での業務
  • 無店舗型性風俗特殊営業
  • 映像送信型性風俗特殊営業
  • 店舗型電話異性紹介営業、または無店舗型電話異性紹介営業

パチンコ店やゲームセンター、麻雀店、キャバレー、スナックなどの風俗関連のお店では、業務ができないと覚えておきましょう。

3. 罰則を把握する

外国人留学生のアルバイト雇用において規則違反があった場合、雇用主は厳しい罰則を受ける可能性があります。これは、出入国管理及び難民認定法第73条の2に定められています。

例えば、外国人留学生の労働時間の上限を超えてアルバイトをさせた場合、雇用主は不法就労助長罪に問われることがあります。また、資格外活動許可を得ていない留学生を雇用した場合や、風俗営業など法律で禁止されている業種で働かせた場合も、同様に罰則の対象です。

これらの違反行為に対しては、3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります。

さらに、外国人労働者を雇用または離職させる際には、ハローワークへの届け出が義務付けられています。この届け出を怠ったり、虚偽の届け出を行った場合には、30万円以下の罰金が科せられるため注意が必要です。

外国人留学生アルバイトの雇用保険加入義務の有無

外国人留学生アルバイトの雇用保険加入義務の有無

外国人留学生をアルバイトとして雇用する際、原則として雇用保険の加入義務は生じません。これは、昼間学生である留学生が雇用保険の適用対象外となるためであり、同様の原則は日本人の学生アルバイトにも適用されます。

ただし、外国人留学生のアルバイトに対しても、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法といった日本の労働関連法規は、日本人従業員と同様に適用されます。

そのため、雇用保険への加入は不要となる一方、労災保険への加入義務は発生します。留学生も労働者とみなされるため、労災保険の保険料を計算する際の賃金に算入されます。

外国人留学生アルバイトにおける主な社会保険の加入義務の有無は、以下のとおりです。

保険の種類 加入義務の有無 理由
健康保険 × 加入要件を満たさない(週の所定労働時間が40時間の事業所の場合)
厚生年金 × 加入要件を満たさない(週の所定労働時間が40時間の事業所の場合)
雇用保険 × 昼間学生である留学生は雇用保険の加入対象外であるため
労災保険 留学生も労働者に該当し、労働保険料の算出基礎となる賃金に算入される

したがって、企業が外国人留学生をアルバイトとして雇用する際には、雇用保険への加入は不要ですが、労災保険への加入が必須となる点に注意が必要です。

外国人留学生アルバイトを雇用する2つのメリット

外国人留学生アルバイトを雇用する2つのメリット

外国人留学生をアルバイトとして雇用することは、企業にとって以下のような2つのメリットが期待できます。

  • 人手不足の解消
  • 国際的な対応が可能になる

人手不足の解消

少子高齢化が深刻化し、労働人口の減少が見込まれる現代において、外国人留学生のアルバイト雇用は、企業にとって有効な労働力不足対策となります。特に中小企業では人手不足がより顕著で、外国人留学生をアルバイトとして採用することは、労働力不足を補う上で期待できます。

国際的な対応が可能になる

企業がアルバイトとして多様な国籍の留学生を雇用することは、グローバル対応力を高める上で有効です。

例えば、日本語が苦手な外国人観光客が来店した際に、留学生が母国語でメニューを説明したり、お客様のニーズを丁寧に聞き取ったりすることで、スムーズな対応が実現します。これにより、多様な顧客層へのサービス提供が向上し、企業の国際競争力強化にもつながります。

外国人留学生アルバイトを雇用する時の企業側の対応

外国人留学生アルバイトを雇用する時の企業側の対応

外国人留学生をアルバイトとして雇用する際には、企業側が事前にいくつかの重要な対応を行う必要があります。対応すべき項目は、以下の4つです。

  • 外国人留学生の在留資格を確認する
  • 資格外活動許可の有無の確認をする
  • 他のアルバイト状況の確認をする
  • ハローワークへ報告する

外国人留学生の在留資格を確認する

日本に在留する外国人は、入国時に許可された在留資格に基づき、定められた期間内でのみ活動が認められます。そのため、外国人留学生を雇用する企業は、採用前に以下の点を確認する必要があります。

  • 雇用する留学生が所持する在留カードで、在留資格と在留期間を確認すること
  • 担当させる業務内容が、在留資格で認められている活動範囲内であるかを確認すること
  • 在留期間が満了していないかを確認すること

資格外活動許可の有無の確認をする

外国人留学生は、留学の在留資格だけではアルバイトをすることはできません。アルバイトをするには、地方出入国在留管理局で「資格外活動許可」を必ず取得する必要があります。この資格外活動許可の取得は、入管法でアルバイト雇用の必須条件と定められています。

もし資格外活動許可を得ていない留学生をアルバイトとして雇用した場合、企業は不法就労助長とみなされるため、採用前に必ず許可の有無を確認しなければなりません。面接で留学生が許可を得ていない場合は、雇用契約を結ぶ前に、必ず資格外活動許可を取得するよう指示するようにしましょう。

他のアルバイト状況の確認をする

外国人留学生がアルバイトをする場合、労働時間の上限が法律で定められています。企業が労働時間を決定する際には、留学生が他のアルバイトを掛け持ちしている可能性を考慮し、事前に本人のアルバイト状況を確認することが重要です。確認後、1週間の労働時間の合計が28時間以内になるように調整する必要があります。

ハローワークへ報告する

労働施策総合推進法第28条第1項により、企業は外国人労働者を雇用または離職させる場合、その都度、ハローワークへ以下の情報を届け出る義務があります。

  • 外国人労働者の氏名
  • 在留資格
  • 在留期間など

この届け出は、ハローワークの窓口での提出に加え、電子申請も利用可能です。届け出を怠った場合や虚偽の届け出を行った場合は、30万円以下の罰金が科される可能性があるため、注意が必要です。

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外国人留学生におけるアルバイト雇用のまとめ

外国人留学生におけるアルバイト雇用のまとめ

この記事では、外国人留学生におけるアルバイト雇用について解説してきました。

外国人留学生をアルバイトとして雇用する際、企業が把握すべき重要な点があります。雇用保険は原則として加入不要ですが、労災保険への加入は必須です。健康保険や厚生年金も、加入要件を満たさない場合は加入の必要はありません。

主な注意点として、労働時間は週28時間以内を厳守し、他社でのアルバイトとの掛け持ちを含めた総労働時間を調整する必要があります。また、風俗関連の業種での就労は禁止されており、違反した場合は重い罰則が科せられます。採用時には、必ず在留資格と「資格外活動許可」を確認し、ハローワークへの届け出も義務付けられています。

これらの点を遵守し、適切な雇用を心がけましょう。