特定技能人材の事前ガイダンスについて、「何を、どのように、いつ説明すれば良いのか」といった疑問や不安をお持ちではありませんか?この事前ガイダンスは、外国人材が安心して日本での就労生活を送るための、企業に義務付けられた重要なステップです。
この記事では、必ず説明すべき義務的支援の内容から、円滑な受け入れを促す追加推奨事項、そしてトラブルを未然に防ぐための3つの実施上の注意点まで、詳しく解説しています。
この記事を読むことで、法的要件を満たしつつ、特定技能人材との信頼関係を築き、スムーズな受け入れを実現するための適切な事前ガイダンス実施に繋げることができます。
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特定技能人材受け入れの事前ガイダンスとは?
特定技能人材の受け入れを検討している企業にとって、採用前の「事前ガイダンス」は、外国人材が日本で安心して働くための第一歩となる、義務付けられた重要なサポートです。事前ガイダンスは、企業と外国人材がお互いに信頼関係を築く上で欠かせません。事前ガイダンスは、「特定技能1号」の在留資格を持つ人材が対象で、「特定技能2号」は対象外です。
特定技能人材との雇用契約を結ぶ際には、事前ガイダンスを実施する必要があり、これは企業が実施すべき「義務的支援」10項目の一つです。事前ガイダンスでは、主に労働条件や業務内容、入国手続き、保証金徴収の有無などについて説明します。
企業は、これらの支援内容をすべて含んだ「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、その計画に基づいて事前ガイダンスを行う必要があります。この支援計画の作成や実施に関するサポートは、登録支援機関に委託することも可能です。
企業が特定技能人材を受け入れる際に事前ガイダンスを行うことは、特定技能運用要領において明確に「義務的支援」と定められています。さらに、特定技能雇用契約の適正な履行に関する基準を定める省令(特定技能基準省令)第4条第1号に基づき、支援計画を作成し、適切に実行することが求められています。
この義務をきちんと守らない場合、例えば、支援計画として届け出た内容が実行されなかったり、虚偽の届け出を行った場合には、企業側が罰せられる可能性もあります。そのため、企業は特定技能人材に対して、適切な方法で事前ガイダンスを提供しなければなりません。
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特定技能人材受け入れの事前ガイダンスの適切な実施時間
特定技能外国人を雇用する際は、事前ガイダンスを3時間程度かけて行うことが推奨されます。これは、特定技能外国人の方が提供される情報を十分に理解できるようにするためです。受け入れ企業または登録支援機関は、特定技能人材が納得できるまで丁寧に説明を行わなければなりません。
また、実施時期は、雇用契約締結前が望ましいとされています。海外から特定技能外国人を呼び寄せる場合も、国内で採用する場合も同様です。このガイダンスを通して、特定技能人材は雇用契約の詳細や日本での活動内容、入国時の注意点などを事前に把握できます。
特定技能の事前ガイダンスで解説しないといけない内容
特定技能の外国人が日本で働き始め、安心して暮らすためには、事前ガイダンスが非常に重要です。受け入れ企業は、特定技能運用要領で定められた「義務的支援」として、以下の内容について、特定技能の外国人に説明し、理解してもらう必要があります。
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労働条件・雇用契約
事前ガイダンスでは、特定技能の外国人材が行う業務内容や賃金などの労働条件について、詳しく説明します。具体的には、業務内容や労働時間、休日、給与、手当、退職に関する事項といった雇用契約書の内容をわかりやすく説明する必要があります。
特に、特定技能の外国人材を日本人従業員と同等以上の条件で雇用すること、担当させる業務がその外国人材の在留資格に適しているかを確認してから雇用契約を結ぶことが重要です。
従事業務の具体内容
事前ガイダンスでは、会社で実際に行う業務内容についてご説明します。特定技能制度に沿った活動・業務区分であることを明確にし、特定技能人材のスキルと、これから就業する業種のスキルにミスマッチがないかを確認することが重要です。
具体的には、配属部署や担当業務、キャリアパスなどについて説明します。
入国手続の流れ
特定技能人材の採用パターンに応じ、入国手続きの内容と流れを解説します。新たに海外から人材を採用する場合、現地での日本語・技能試験合格後、受け入れ企業との雇用契約、在留資格認定証明書の申請、そして事前ガイダンスを実施します。
その後、在留資格認定証明書が送付・受領され、ビザを申請し、交付後3ヶ月以内に日本へ入国する流れとなります。これらの手続きがスムーズに進むよう、詳細な説明と支援を行います。
具体的には、在留資格認定証明書の取得方法や査証申請の手順、入国時および在留中の手続きについて案内します。一方、すでに日本での在留資格を有する人材を採用する場合は、入国手続きは不要です。採用決定後、事前ガイダンスを行い、雇用契約の締結へと進みます。
違法契約の有無確認
特定技能外国人本人またはその配偶者、親族が、今回の特定技能活動に関して、不当に保証金などを徴収されていないか、今後もその予定がないかを確認します。
また、特定技能雇用契約の不履行について、違約金を定める契約を締結していないか、今後も締結する予定がないかを確認することが重要です。
送り出し機関との合意を確認
まず、送り出し機関が適切であることを確認した上で、特定技能外国人が負担する費用について、総額だけでなく、費用の詳しい内訳を本人が十分に理解しているかを確認します。
具体的には、費用の支払い状況や支払い先の機関名、支払日、金額、そして費用の内訳を確認します。法律で定められた義務的支援に必要な費用は、企業または登録支援機関が負担すべきです。
これらの費用が直接的にも間接的にも本人の負担とならないよう、説明するようにしましょう。
住居支援の説明
企業や登録支援機関は、特定技能人材に対する住居支援について、具体的な内容を明確に説明する必要があります。
例えば、社宅を提供する場合は、部屋の広さや家賃、光熱費、インターネット環境など、特定技能人材が負担する費用を詳しく示さなければなりません。また、連帯保証人が必要な場合は、受け入れ企業側が用意するなど、安定した住居を確保するための対応が求められます。
相談・苦情窓口案内
特定技能の外国籍従業員が安心して日本で生活できるよう、仕事や日常生活、社会生活における相談や苦情を受け付ける体制と連絡先をきちんと伝えておくことが大切です。
例えば、相談や苦情を受け付ける曜日や時間、面談、電話、メールといった対応方法を明確に示し、困ったときに確実に頼れると思ってもらえるように説明しましょう。受け入れ企業のサポート担当者は、3ヶ月に1回以上ミーティングを行い、仕事上の相談だけでなく、生活の相談にも対応できることを伝えるようにしましょう。
支援担当者の連絡先案内
企業や登録支援機関は、支援担当者の氏名と連絡先を特定技能外国人に明確に伝えなければなりません。この情報は、作成する支援計画書にも必ず記載する必要があります。
また、支援担当者は、労働基準法違反が判明した場合、通報義務があることを認識しておきましょう。
特定技能の事前ガイダンスで追加で行った方がよい内容
特定技能人材に対する事前ガイダンスでは、法的に義務付けられた「義務的支援」に加え、外国人材が日本での生活に円滑に適応できるよう、「任意的支援」を行うことが望ましいとされています。
これらの支援は、受け入れ企業側の勤務環境を考慮し、必要に応じて取り入れることが推奨されます。
特定技能の事前ガイダンスで追加で行った方がよい内容は、以下のとおりです。
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持参品のアドバイス
母国から日本へ来る際に、何を持ってくるべきか、持っていると便利なものは何か、そして持ち込みが禁止されているものは何かについて、具体的なアドバイスをしましょう。日本に入国する時期の気候に合わせた服装のアドバイスと合わせて説明することで、特定技能人材が持参する服などを検討する際に役立ちます。
企業・登録支援機関からの支給品
特定技能の外国人を受け入れる企業や登録支援機関は、入国後に支給する物品について、事前に詳細を説明することが重要です。例えば、仕事で使う作業着や工具などが該当します。
支給される物と、外国人が自分で管理する物を明確に区別し、生活や業務の流れに沿って説明することで、入国後の混乱を減らせます。
日本の気候・服装
初めて日本に入国する外国人の方のために、日本の気候について詳しく説明しましょう。入国時期によって過ごしやすい服装が違うため、気温や湿度に合わせた具体的な服装のアドバイスが必要です。
生活に必要な金額
特定技能の外国人が日本で最初の生活を送るために必要な費用について説明するのも大切です。特に注意すべきは、入国直後から最初の給料を受け取るまでの期間です。この間、母国から持ってきたお金が足りなくなり、生活に困らないように、十分な準備が必要です。
日本での仕事に慣れ、安定した生活を送れるようになるまでに必要な金額を具体的に伝え、事前に準備するよう促しましょう。
特定技能の事前ガイダンスの3つの注意点
特定技能の人材に事前ガイダンスをする時は、特に次の3つに注意が必要です。
これらの点に気をつけることで、問題が起こるのを防ぎ、外国人が安心して日本で働き始められます。
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1. 契約前に必ず実施する
特定技能雇用契約を締結する前に、必ず事前ガイダンスを行うことが重要です。なぜなら、このガイダンスには、具体的な労働条件をはじめ、契約を結ぶ前に外国人材が理解しておくべき大切な情報が含まれているからです。
外国人材がガイダンスの内容を十分に理解し、納得しないまま雇用契約を結ぶと、法律違反になるおそれがあるため、注意が必要です。
2. わかりやすい実施方法を選ぶ
原則として、事前のガイダンスは対面で行う必要があります。直接会えない場合でも、インターネットを利用した双方向ビデオ通話などで、確実に本人確認をした上で実施しなければなりません。本人確認をせずに、文書の郵送やメール送信だけで済ませることは認められません。
対面もしくは双方向ビデオ通話を行うことで、特定技能を持つ外国人が確実に情報を受け取り、疑問点を解消できる環境を整えることができます。
3. 言語対応を整える
特定技能の外国人に対する事前ガイダンスは、特定技能の外国人が内容をきちんと理解できる言語で行う必要があります。特定技能外国人は日本語を学習していますが、雇用契約など重要な内容については理解が難しい場合も多いので、母語の通訳者の同席が求められます。
事前ガイダンスを特定技能の外国人が内容をきちんと理解できる言語で行うことにより、将来的なトラブルを回避し、特定技能外国人が提供される情報を正確に理解し、納得した上で日本で就労できるようになります。
特定技能の事前ガイダンスのまとめ
この記事では、特定技能の事前ガイダンスについて解説してきました。
特定技能の事前ガイダンスは、外国人材が安心して日本で働き始めるための義務的なサポートです。
労働条件や仕事内容、入国手続き、違法な契約ではないかの確認、住居のサポート、相談窓口、担当者の連絡先など、重要な情報を丁寧に説明する必要があります。さらに、持参する物のアドバイスや支給品、日本の気候や服装、生活費など、任意でのサポートも推奨されます。
事前ガイダンスを実施する際には、必ず雇用契約を結ぶ前に行い、対面または本人確認ができるビデオ通話で行いましょう。その際、特定技能の外国人が理解できる言語で対応することが非常に大切です。これらの点に注意して適切な事前ガイダンスを行うことで、トラブルを防ぎ、スムーズな人材受け入れにつなげてください。