外国人採用の求人票作成は、日本人向けとは異なる多くの難しさがあります。海外では「話し手に責任があり、詳細な情報が求められるローコンテクスト」なコミュニケーションが主流である一方、日本では「聞き手側の理解に委ねられるハイコンテクスト」な文化が根強く、この違いが求人票の役割にも表れます。
この記事では、このローコンテクスト文化に対応した外国人採用の求人票の作成について、必須項目や設けるべき項目、具体的な書き方のポイントを詳しく解説します。また、特に注意すべき差別表現の回避や日本人と同等以上の待遇といった重要な注意点も網羅しています。
この記事を読むことで、効果的かつ法的に問題のない求人票を作成し、優秀な外国人材の獲得へと繋げることができるでしょう。
外国人採用の求人票の必須項目
日本で求人情報を掲載する際には、職業安定法に基づき、以下の項目を明確に記載する必要があります。
- 仕事内容
- 労働契約期間
- 勤務地
- 勤務時間、残業の有無、休憩時間、休日
- 給与
- 各種保険の適用
外国人労働者向けの求人票を作成する際は、上記の必須項目に加えて、キャリアパスや役割と責任範囲、企業文化や価値観、募集の背景、福利厚生、必要な日本語能力レベルなどを記載することが推奨されます。
また、出入国在留管理庁「雇用条件書」も準備するようにしましょう。
参考:「雇用条件書」の例
外国人採用の求人票の重要項目
外国人労働者を雇用する際は、職業安定法で定められた必須項目に加え、以下の項目を求人票に記載するのがおすすめです。
- キャリアパス
- 役割や責任・権限
- 募集背景
- 福利厚生
これらの項目は、海外における求人票の重要な役割やローコンテクスト文化、ジョブ型雇用という背景から、職務に関する詳細な情報を伝える上で不可欠です。
まず、将来のキャリアパスを明確に示すことが大切です。具体的には、1年後、3年後、5年後といった段階で、どのようなキャリアモデルが考えられるかを提示します。キャリアパスに応じて、責任範囲や権限がどのように変化するか、昇進の機会、利用可能な研修制度などを具体的に記載すると、求職者にとって魅力的な求人票になります。
次に、そのポジションに求められる役割と責任、権限を明確に示す必要があります。海外ではジョブ型雇用が一般的であり、職務記述書で業務の詳細、目的、求められる役割、期待される成果、チーム編成などが詳しく記載されます。そのため、求人票でも同様に詳細な情報を提供することが求められます。
また、企業独自の価値観や組織風土を求人票に記載することがおすすめです。欧米圏では、ローコンテクストなコミュニケーションが主流です。日本のようなハイコンテクスト文化とは異なり、暗黙の了解や空気を読むことを期待しないため、企業の文化を明確に伝えることが重要です。
加えて、社会保険などの加入に関する事項はもちろん、支給する手当やその他の福利厚生制度についても、すべて記載することが望ましいです。住宅手当、家族手当、皆勤手当など一般的な手当に加え、企業独自の制度があれば漏れなく記載することで、外国人労働者へのアピールとなります。
さらに、ポジションに求められる日本語レベルを明確にしておく必要があります。「ネイティブレベル」「ビジネスレベル」「日常会話レベル」といった区分で、どのレベルが必要なのかを明示することで、募集ターゲットを明確にすることができます。
これらの項目を詳細に記載することで、外国人労働者は求人票だけで職務に関する情報を十分に得ることができ、企業と求職者のミスマッチを防ぎやすくなります。また、報酬は日本人と同等以上である必要があり、これは在留資格取得の要件にも関わるため、求人票作成時から注意するようにしましょう。
外国人採用の求人票の英語での書き方
外国人採用における求人広告では、英語での作成が必要となるケースが多くあります。日本語の求人広告と異なり、英語の求人広告は文章形式で記述されることが一般的で、自由度が高くアピールポイントを豊富に盛り込める一方、構成が難しいという側面もあります。
外国人候補者にとってわかりやすい求人広告を作成するために、以下の構成で記述するようにしましょう。
Company Profile |
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Positions |
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Salary, Working hours, etc | 給与、勤務時間、休日などの待遇を詳細に記載 |
Benefits & Compensations |
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Requirements and Skills |
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Company Information | 社名(正式名称)、本社住所、創業年、従業員数を記載 |
上記の構成に基づいて英語の求人広告を作成することで、外国人候補者にとってわかりやすい求人広告となり、効率的かつ正確な採用活動に繋がるでしょう。
外国人採用の求人票のテンプレート
外国人採用において、求人票作成は非常に重要です。テンプレートを活用することで、効率的かつ正確な情報提供ができます。特に英語の求人票は、日本語と異なり文章で書かれることが多く、自由度が高いため、テンプレートを使うことで企業の魅力を効果的にアピールできます。
その結果、外国人候補者にとってわかりやすい求人票を作成し、採用活動をより効果的に進めることが可能です。
以下に、外国人採用の求人票作成に役立つテンプレートを紹介します。以下を参考に求人票を作成してみましょう。
外国人向け求人票の2つの注意点
外国人採用の求人票を作成する際には、通常のルールに加えて、特別な注意点があります。
これらを守ることで、採用活動での法的リスクを避け、よりスムーズで公正な採用ができます。
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人種や国籍等の差別になりえる表現は伏せる
職業安定法に基づき、求人活動では国籍や人種、宗教などを理由とした差別的な扱いは禁じられています。そのため、求人票を作成する際は、「ベトナム人募集」のように特定の国籍に限定する表現や「外国人歓迎」のように外国人を特別扱いするかのような表現は、差別とみなされる可能性があるため避けるべきです。
特定の言語スキルや文化に関する知識が必要な場合は、スキルや経験に基づいて具体的に記載することが推奨されます。「ベトナム語がネイティブレベルで話せる方」や「ベトナムの文化や市場に詳しい方」といった表現を用いるのが適切でしょう。
日本人と同等の待遇にする
外国籍であることを理由に給与を低くすることは許されません。日本人従業員と同等、またはそれ以上の給与を支払うべきです。もし外国人に対する差別があると判断された場合、就労ビザが発行されず、採用できない事態につながる可能性があります。
また、日本人社員が多い環境で、外国籍の方が少数派として働くことは、応募者にとって大きな負担となることを理解しておく必要があります。そのため、採用活動では、応募者の国籍や文化に配慮した対応を心がけることが重要です。
外国人採用に必要な求人票におけるまとめ
この記事では、外国人採用に必要な求人票について解説してきました。
外国人採用の求人票作成では、職業安定法に基づく必須項目に加え、キャリアパスや役割、企業文化、福利厚生、日本語レベルなど詳細な情報が重要です。特に、海外のジョブ型雇用やローコンテクスト文化に対応するため、職務内容を具体的に記述し、ミスマッチを防ぐことが重要です。
企業は、差別表現を避け、日本人と同等以上の待遇を保証する必要があります。そうすることで、法的リスクを回避して就労ビザ取得の要件を満たし、外国人候補者にとって公平で魅力的な採用活動に繋がります。