ワーキングホリデー中の外国人の雇用保険は?加入条件や企業の注意点を解説

ワーキングホリデー制度を利用して日本で働く外国人が増える現状で注目されていることの一つが「雇用保険の加入」です。

ワーキングホリデーは、短期滞在でありながら就労可能な在留資格であるため、加入の必要があるのか迷う方もいるかもしれません。

そこで本記事では、ワーキングホリデー中の外国人が雇用保険に加入できる条件や、企業が気をつけるべきポイントをわかりやすく解説します。

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「ワーキングホリデー」とは?

「ワーキングホリデー」とは?

ワーキングホリデー(通称ワーホリ)は、二国間・地域間の取り決めに基づき、若い人々が滞在国で旅行や文化体験をする一方で、滞在資金を補うための就労を一定条件のもとで認められる制度です。

2025年1月1日時点で日本とワーキングホリデーの協定を結んでいるのは以下の30か国・地域です。

  1. オーストラリア
  2. ニュージーランド
  3. カナダ
  4. 韓国
  5. フランス
  6. ドイツ
  7. 英国
  8. アイルランド
  9. デンマーク
  10. 台湾
  11. 香港
  12. ノルウェー
  13. ポルトガル
  14. ポーランド
  15. スロバキア
  16. オーストリア
  17. ハンガリー
  18. スペイン
  19. アルゼンチン
  20. チリ
  21. アイスランド
  22. チェコ
  23. リトアニア
  24. スウェーデン
  25. エストニア
  26. オランダ
  27. ウルグアイ
  28. フィンランド
  29. ラトビア
  30. ルクセンブルク

ワーキングホリデーのおもな特徴は以下の通りです。

  1. 滞在と就労の両立が可能
  2. 年齢制限がある
  3. 滞在期間は原則1年
  4. 日本ではこのビザ制度で入国・滞在する外国人は、多くの場合「特定活動」の在留資格となる

外国人が日本でワーキングホリデービザを取得するために求められる要件は以下の通りです。

要件 概要
年齢
  • オーストラリア、カナダ、韓国及びアイルランド:18歳以上25歳以下
  • アイスランド:18歳以上26歳以下
  • 上記以外の国・地域:18歳以上30歳以下
国籍または居住地 日本とワーキングホリデー制度の協定を結んでいる相手国・地域の国民または居住者
滞在目的
  • 基本的に「休暇」を過ごす意思があること
  • 滞在資金を補填するための就労は認められているが、就労が主目的であってはいけない
同伴者 不可
資金の証明 滞在開始時に、生活を始められるだけの資金および帰国に必要な航空券もしくは資金を所持している必要がある
健康状態 健康でなければならない
過去のビザ取得歴 原則として一部を除き、過去にワーキングホリデービザを取得していないことが条件

ワーキングホリデーに関するさらに詳しい概要については以下のページを参考にしてください。
出典:ワーキング・ホリデー制度|外務省

ワーキングホリデー中の雇用保険の必要性

ワーキングホリデー中の雇用保険の必要性

ワーキングホリデーで来日する外国人の場合、雇用保険については基本的に「加入義務がない」とされるのが一般的です。

ワーキングホリデーは「休暇を主な目的とした制度」であり、労働はあくまでも滞在資金を補うための手段と位置づけられているのがおもな理由です。
ただし、以下の条件をすべて満たす場合は、ワーキングホリデー中の外国人であっても雇用保険の適用対象となる可能性があります。

  1. 所定労働時間が週20時間以上
  2. 雇用期間の見込みが31日以上

ワーキングホリデー中でも上記の条件を満たす場合は雇用保険加入の対象となり得るため、慎重な確認が必要です。

また、雇用保険以外の社会保険はほかの一般的な労働者と同じ条件で加入する義務があります。詳しい加入条件については次項で解説します。

ワーキングホリデー中の外国人の社会保険加入条件

ワーキングホリデー中の外国人の社会保険加入条件

ワーキングホリデー中の外国人は、雇用保険以外の社会保険については一定の条件を満たせば加入義務が課せられます。
加入が求められるおもな社会保険制度とその内容は以下の通りです。

保険制度 おもな保障内容
健康保険 医療費の一部負担、病気・ケガ時の医療保障、出産手当など
厚生年金保険 老齢年金、障害年金、遺族年金など将来の年金保障
労災保険 業務上・通勤中の事故・疾病への補償

以下のような条件を満たすと、健康保険・厚生年金保険に加入しなければなりません。

条件 概要
所定労働時間が週20時間以上 パート・アルバイトでも、週20時間以上の勤務があると適用対象になる
雇用期間の見込みが2か月以上 短期・臨時雇用のみでは加入対象外になる場合もある
月収が8万8,000円以上 所定賃金がこの基準を超えると加入義務が課せられる場合が多い
勤務先が「強制適用事業所」である 法人であること、あるいは従業員数が一定以上の個人事業所など、社会保険の強制適用がされる事業所だと加入義務が発生する

なお、労災保険については一人でも雇用している事業者は加入しなければならない保険であるため、労働者は雇用された時点で自動的に加入します。

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ワーキングホリデー中の外国人の社会保険加入手続き

ワーキングホリデー中の外国人の社会保険加入手続き

ワーキングホリデーで来日して就労する外国人が、健康保険や厚生年金などの社会保険に加入する場合、所定の手続きを行う必要があります。

社会保険への加入は、雇用主と本人の双方に義務と役割があるため、それぞれが必要な対応を正しく理解しておくことが大切です。

ここでは、ワーキングホリデー中の外国人労働者が社会保険に加入する際に必要な本人側の手続きと、企業側が行うべき手続きについてそれぞれ詳しく解説します。

  • 本人がすべき手続き
  • 企業がすべき手続き

本人がすべき手続き

本人がすべき手続きとして共通しているものは以下の通りです。

  1. 本人確認書類の準備
  2. 外国人でもマイナンバーを取得している場合は、その番号を申告
  3. 被保険者資格取得届のための書類を会社に提出

各社会保険ごとに必要な書類は以下の通りです。

社会保険 必要書類 備考
健康保険・厚生年金保険
  • パスポートの身分事項ページ写し
  • 在留カード写し
  • 資格外活動許可証(または許可印)写し
  • マイナンバーがあれば番号
短期在留外国人やマイナンバー未保有者には追加の本人確認書類が必要な場合あり
国民年金(該当する場合)
  • 在留カードなどの身分証明書写し
  • 過去の年金加入記録
  • 事業主による厚生年金加入がない場合、国民年金に加入する必要あり
  • 本人が自ら加入手続きを行う必要がある

なお、労災保険については本人側が行う手続き・提出すべき書類はありません。

企業がすべき手続き

企業がすべき手続きの流れは以下の通りです。

  1. 外国人がワーキングホリデーで就労できるのを確認
  2. 雇用契約書・労働条件通知書を整備する
  3. 社会保険加入要件を満たすかを判断する
  4. 各社会保険の申請に必要な書類を各機関に提出
  5. 保険料の計算・給与からの控除・会社負担分の支払い額などを把握する
  6. 必要に応じて、被保険者証の交付、扶養家族がいる場合の被扶養者異動などの手続きを行う

保険種類ごとの提出先や期限は以下の通りです。

保険制度 おもな届出 提出先 提出期限
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 所轄の年金事務所または健康保険組合 加入要件を満たした日から5日以内
労災保険 保険関係成立届 所轄の労働基準監督署 適用事業となった日または従業員を雇い入れた日の翌日から10日以内
雇用保険(該当する場合) 雇用保険被保険者資格取得届 ハローワーク 被保険者となる日の属する月の翌月10日まで

各社会保険はそれぞれ必要な届出や提出先、期限が異なるため、一つひとつ確認して対応するようにしましょう。

参考:外国人従業員を雇用したときの手続き|日本年金機構

ワーキングホリデー中の外国人を雇用する時の注意点

ワーキングホリデー中の外国人を雇用する時の注意点

ワーキングホリデー制度を利用して来日した外国人を雇用する際には、日本人やほかの在留資格者とは異なる注意点があります。

企業が押さえておくべき4つの重要なポイントは以下の通りです。

注意点 概要 想定されるリスク 企業側の対応策
①社会保険の加入義務 健康保険・厚生年金などは、労働条件によって加入義務あり 未加入による遡及徴収・行政指導 雇用前に労働時間や賃金を確認し、加入要件をチェック
②ビザの切り替え管理 ワーホリ終了後に雇用を続ける場合は、就労ビザなどに切り替えなければならない 在留資格違反・不法就労 在留期限・活動内容を把握し、計画的な管理を行う
③脱退一時金の申請 日本の年金制度加入者が帰国後に申請できる返還制度 本人が制度を知らず申請漏れ 採用時に制度説明を行い、申請時期を案内する
④社会保険料は還付されない 健康保険などは脱退時に返金されない 労働者とのトラブル・誤解 年金以外の保険料は戻らないことを丁寧に説明

上記の各注意点のポイントは以下の通りです。

①社会保険の加入義務
条件を満たしているのにもかかわらず保険に未加入のまま雇用を続けた場合、後から企業側に対して保険料の遡及徴収が行われたり、行政指導・罰則の対象になる可能性があります。
採用前に必ず労働条件と在留資格を確認した上で、加入要否の適切な判断が求められます。
②ビザの切り替え管理
ワーキングホリデー制度は最長1年間の滞在が可能で、期限終了後に別の在留資格へ切り替えるケースもあります。
ただし、切り替え手続きには時間と条件が必要であり、許可が下りるまでの間に就労を継続してしまうと在留資格違反となる恐れがあります。
企業としては、在留期限やビザの種類、活動範囲などを雇用前に確認し、継続雇用を希望する場合は計画的な対応を行わなければなりません。
③脱退一時金の申請
厚生年金や国民年金に加入していた外国人労働者は、帰国後に「脱退一時金」を請求することで、納付した保険料の一部を受け取れます。
請求期限は原則として出国から2年以内とされており、期限を過ぎると受け取れません。
企業側が申請手続きを代行する必要はありませんが、制度の存在をあらかじめ説明しておくと、本人の不利益を防ぎつつトラブルを避けられます。
④社会保険料は還付されない
健康保険・労災保険などは還付されず、返還の可能性があるのは年金制度の一部に限られています。
また、脱退一時金には所得税の源泉徴収が金額に応じてかかります。

上記の4点に注意し、企業・外国人材の双方が不利益を被らないように対応・配慮しましょう。

ワーキングホリデー中の外国人における雇用保険のまとめ

ワーキングホリデー中の外国人における雇用保険のまとめ

ワーキングホリデーの在留資格(特定活動)は、おもに「休暇を目的とした滞在」であり、就労が補助的活動と位置づけられています。

そのため、ワーキングホリデー制度を利用して日本で働く外国人については、原則として雇用保険の加入対象外とされている点に注意が必要です。

一方で、健康保険・厚生年金保険・労災保険などの社会保険については、労働条件を満たす限り、日本人と同様に加入義務があります。

企業が押さえておくべき社会保険手続きのポイントは以下の通りです。

  1. 雇用契約締結時に労働時間・賃金・契約期間を明示し、保険加入要件を確認する
  2. 健康保険・厚生年金保険の「被保険者資格取得届」を5日以内に年金事務所へ提出する
  3. 労災保険・雇用保険(該当する場合)の届出も期限内に行う
  4. 脱退一時金や社会保険料の返還有無など、本人に制度の説明を行う

保険の加入漏れや在留資格の誤認は、企業にとってもリスクとなるため、採用時点での制度理解と正確な対応が不可欠です。外国人労働者との信頼関係を築き、法令遵守を徹底して、双方にとって安心・安全な雇用環境を実現しましょう。