労働人口が減少する日本において、外国人採用は人手不足を解消する為に有効な選択肢の一つです。
しかし、いざ外国人を採用するとなると、何をすれば良いか、どの程度のコストがかかるかなど疑問を抱える企業が少なくありません。
海外在住か国内在住かなど雇用する外国人の状況により、コストや準備が異なります。
この記事では、以下について詳しく解説します。
・ 外国人雇用に要する期間やコスト
・ 外国人雇用の6つの手順
外国人採用の流れや手順などを知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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外国人採用のメリット
外国人採用をする企業は増加しています。
実際に、厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)によれば、2022年の外国人労働者数は1,822,725人。
届出が義務化された2007年以降、過去最高を記録しました。
理由としては、以下などのメリットを得られるからです。
◉ グローバル進出の際の戦力になる
◉ 異文化導入による社内の活性化
ここからは、外国人採用の上記メリットについて詳しく解説します。
参考:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)|厚生労働省
若手人材が確保出来る
外国人を採用すれば若手人材の確保が出来ます。
日本は総人口の減少・少子高齢化により、労働人口が減少し人手不足が深刻化しています。
以下は、帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2023 年 4 月)」のデータです。
出典:人手不足に対する企業の動向調査(2023 年 4 月)|帝国データバンク
このデータによれば、2023年時点における正社員の人手不足割合は53.9%、非正社員は30.7%となっています。
また、同じく帝国データバンクが発表したデータによれば、従業員の離職や採用難などの人不足により、業績が悪化し倒産した2023年上半期の「人手不足倒産」は110件。
出典:「人手不足倒産」、過去最多ペース 2023年上半期で110件発生、転退職による倒産も増加|PR TIMES
日本における従業員の確保が大きな問題の一つとなっています。
一方、厚生労働省が発表した「在留資格別×男女別にみた外国人労働者数の推移」によれば、2022年の外国人労働者1,822,725人中、約41%にあたる742,639人が20代です。
外国人を採用すれば、日本で減少する若い働き手を確保出来ます。
参考:在留資格別×男女別にみた外国人労働者数の推移|厚生労働省
グローバル進出の際の戦力になる
外国人採用により、グローバル進出をする際の戦力になるのもメリットの一つです。
グローバル進出には言語が堪能なのはもちろん、現地の考え方や文化、習慣などへの理解が重要です。
独自の商習慣がある国や地域も存在し、合わせなければビジネスは成立しません。
外国人を採用すれば、その外国人を中心にグローバル進出が可能です。
また、日本人従業員が英語に慣れるだけでなく、外国の文化や価値観を知れたり、受け入れる訓練になったりします。
海外に拠点を作るなどのケースでも役立ちますが、自社でインバウンド需要の取り込みを考えている場合も戦力になります。
日本政府観光局が発表した「訪日外客数(2023年6月推計値)」によれば、観光客数ランキングは1位が韓国、2位中国、3位台湾で、上位10ヵ国中9ヵ国がアジア諸国です。
アジア諸国の外国人を採用すれば、訪日観光客に対してスムーズな接客が出来ます。
異文化導入による社内の活性化
異文化導入による社内の活性化がはかれる点も嬉しいポイントです。
文化や価値観、背景が異なる外国人と働けば、新たな視点やアイディアが生まれます。
これは、外国人から新たなアイディアがもたらされるだけではありません。
外国人から日本のルールや働き方、仕事の進め方などに対して質問を受ける事により、改めて自分たちの働き方などについて考え、見直すきっかけにもなります。
外国人雇用に要する期間は?
外国人雇用に要する期間は、国内か海外どちらに住んでいる外国人を採用するかにより異なります。
大体の目安は、国内在住の外国人を採用するケースでは2~3ヵ月程度、海外在住の外国人を採用するケースでは3~4ヵ月程度です。
外国人を採用する為の主な手順は以下の通りです。
1.外国人の募集開始
2.在留カードの確認
3.面接
4.内定・雇用契約締結
5.在留資格申請・変更手続き
6.受入れ準備
在留資格の申請や変更にも1ヵ月~2ヵ月程度必要な為、雇用する外国人の状況や採用ステップなどにより、
雇用までどの程度の期間を要するかが大きく異なります。
外国人を採用する為の手順に関しては、後ほど詳しく解説します。
外国人を雇用する為にかかる費用は?
雇用する外国人の状況や採用募集方法にもより、雇用する為に必要な費用も異なります。
例えば、人材紹介会社を活用する場合はその手数料が発生。
また、海外在住の外国人を雇用する場合は、渡航費や日本での生活費用、在留資格の発行手続き費用がプラスされます。
ここからは、外国人を雇用する為にかかる以下の費用について詳しく解説します。
◉ 在留資格の更新・変更手続費用
◉ 健康診断費用
◉ 渡航費
◉ 日本での生活費用
人材紹介手数料
人材紹介会社を活用する場合は、その利用料が発生します。
目安は、雇用する外国人の初年度理論年収における30%~35%程度です。
ちなみに、理論年収とは「(基本給+各種手当)×12ヵ月分+賞与」で計算される年収の事です。
例えば、理論年収が500万円の外国人を雇用した場合、紹介手数料は150万円~175万円程度になります。
また、求人広告掲載型を利用するケースでは毎月の掲載料、ヘッドハンティング型を利用するケースでは、手数料と成功報酬が必要です。
在留資格の更新・変更手続費用
外国人の保有する在留資格によっては、雇用するにあたり更新や変更が必要で、その手続き費用がかかります。
ちなみに、在留資格とは外国人が日本で活動する証明書の事です。
在留資格と一言でいっても29種類存在し、各資格ごとに活動範囲や滞在期間、労働時間などが定められています。
所持している在留資格の活動範囲や労働時間が自社の雇用内容に合わない場合は、在留資格を変更をしなければなりません。
また、期限が切れそうな場合は更新が必要です。
申請費用自体は4,000円ですが複数の書類が必要になる為、行政書士に手続きを依頼するのが一般的です。
行政書士に依頼する場合、更新は5万円~10万円程度、変更は6万円~10万円程度の依頼料がかかります。
健康診断費用
企業は労働安全衛生法第66条にもとづき、労働者に健康診断を受けさせなければなりません。
外国人労働者も例外ではなく、雇用時と定期的な以下項目の健康診断が義務づけられています。
・ 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
・ 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
・ 胸部エックス線検査及び喀痰検査
・ 血圧の測定
・ 貧血検査
・ 肝機能検査
・.血中脂質検査
・ 血糖検査
・ 尿検査
・ 心電図検査
定期的な健康診断は、一般的な職種では1年に1回、危険業・深夜業の場合は半年に1回必要です。
また、パート・アルバイトであっても1年以上働いており、かつ週の労働時間が正社員の3/4以上であれば、
健康診断を受けさせる必要があります。
万が一、義務づけられている健康診断を受けさせなかった場合、法律違反で50万円以下の罰金が科せられる為、ご注意ください。
渡航費
海外在住の外国人を雇用する場合は、主に以下2つの渡航費が必要です。
・ 現地で採用した外国人が来日する片道渡航費
ちなみに、東南アジアであれば片道3万円~5万円程度、往復4万円~10万円程度が目安になります。
また、面接官が現地に訪問する場合は、居住地から空港までの交通費や宿泊費なども発生します。
ただし、Web会議システムを利用したり、海外の現地法人に居住する社員が面接を担当したりする場合は、面接官の往復渡航費はかかりません。
日本での生活費用
海外在住者を雇用する場合は、日本での住居を確保するなど、日本での生活費もかかります。
住居の準備には、家賃はもちろん敷金・礼金、仲介手数料などが発生。
例えば、10万円のマンションを住居として準備し、敷金・礼金・仲介手数料がそれぞれ家賃1ヵ月分の場合、初月を含め40万円が必要です。
敷金・礼金や仲介手数料が家賃何ヵ月分に相当するかにもより異なりますが、家賃が高くなればなるほど、コストが増加します。
外国人雇用の6つの手順
前述の通り、外国人を雇用する際の主な流れは以下の通りです。
2.在留カードの確認
3.面接
4.内定・雇用契約締結
5.在留資格申請・変更手続き
6.受入れ準備
上記について順に解説します。
1.外国人の募集開始
まず、外国人の募集を開始します。
以下の通り、外国人を募集する方法は複数あり、それぞれ特徴が異なります。
募集方法 | 特徴 |
人材紹介 | ターゲットを絞った募集が可能で、採用や受け入れ業務のサポートをしてくれる。 |
求人サイト | 新聞やメディア、外国語のポータルサイトなどから、募集が可能。LinkedInやwantedlyなどの海外展開しているSNS求人サービスを利用する企業も多い。 |
学校の紹介 | 就職支援課などにアプローチすれば、求人掲載や紹介をしてもらえる。海外留学をしている外国人には優秀な人が多い傾向がある。 |
公的機関 | ハローワークの外国人雇用サービスセンターなどが存在し、無料で利用出来る。 |
紹介 | 外国人の横のつながりで募集が可能で、同じ国の出身者などを採用出来る可能性あり。 |
それぞれメリット・デメリットが存在する為、採用したい外国人のスキルや予算などをふまえ、自社に合う方法を選択するのが重要です。
2.在留カードの確認
国内在住の外国人から応募があれば、その方の在留カードを確認します。
ちなみに、在留カードとは在留資格に関する許可の結果として交付されるカードの事で、以下などの情報が記載されています。
• 生年月日
• 性別
• 国籍・地域
• 住居地
• 在留資格
• 在留期間
• 就労の可否
• 顔写真 など
在留カードは偽造されるケースもある為、目視はもちろんアプリなどを活用し確認するのがおすすめです。
入管庁の「在留カード等読取アプリケーション」を活用すれば、在留カードのICチップを読み取り、
偽造・改ざんされた情報でないかを確認出来ます。
偽造でない確認が取れれば、在留資格が自社の業務内容に合っているかを確認します。
「就労不可」となっていたとしても、裏面下部に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」の記載があれば、制限付きでの雇用が可能です。
3.面接
在留資格に問題がなければ面接に進みます。
面接の質問内容は、合否を決定づけるだけでなく入社後の指導方法やキャリア・注意点の把握などに役立つ為重要です。
最低限聞いておきたい項目は以下の通りです。
明確でない場合、何か嫌な事であればすぐに母国へ帰国してしまう可能性があります。
• 志望動機
自社に対して強い志望動機があれば、長期間働いてくれる可能性があります。
• 日本の法律やマナー、自社のルールを守れるか
自国とは異なる法律やマナー、ルールが存在し、受け入れてもらう事もあります。質問するだけでなく、どのような法律やマナー、
ルールが存在するのかも、面接で説明すると効果的です。
• 働く上での目標やキャリアビジョン
本人の想いと自社が求める業務・キャリアが異なれば、離職につながる恐れがあります。また、確認しておけば入社後の指導や
マネジメントに役立ちます。
また、以下の質問はタブーである為、質問は避けるのがおすすめです。
• 宗教についての質問
• 人種や性別、容姿などについての差別的な発言や質問
• 批判する発言や質問
• 威圧的な態度や発言
相手目線で検討し、話しやすい態度や雰囲気づくりを心がけましょう。
4.内定・雇用契約締結
内定を出し、相手が同意すれば雇用契約を締結します。
トラブルの発生を未然に防ぐ為に、しっかりと条件などを明文化し理解してもらえるように説明しなければなりません。
外国人の場合、相槌を打っていても内容をきちんと理解出来ておらず、後日「そんな事は聞いていない」などといわれる可能性が存在します。
また、海外では契約書を重視する国もあり、明文化されていない内容については決められていないと捉えられるケースも。
とくに、以下の項目に関しては明確に定めるのが重要です。
• 従事する業務
• 始業・終業の時刻
• 所定労働時間を超える労働の有無
• 休憩時間や休日、休暇
• 賃金や賃金の計算方法
• 賃金の支払方法や締切日、支払日
• 昇降給に関する事項
• 雇用契約の期間
• 退職に関する事項 など
上記以外にも、業務に必要な在留資格が取得出来なかった場合の対応についても明記すると良いでしょう。
日本語のものだけでなく、雇用する外国人の母国で雇用契約書や労働条件通知書を作成するのもおすすめです。
5.在留資格申請・変更手続き
海外に在住している外国人を雇用するケースでは在留資格の申請が必要です。
また、国内に住んでいたとしても自社の業務内容や労働時間、雇用期間などに合わせた、在留資格の変更・更新をしなければならないケースがほとんど。
在留資格の取得や変更などを行う為には、書類の準備や1ヵ月~2ヵ月程度の審査期間を要します。
書類に不備があれば、再申請が必要になり入社時期が遅くなる可能性が存在する為、ご注意ください。
6.受入れ準備
最後に勤務開始に向けた受け入れ準備を行います。
例えば、海外在住の外国人を雇用する場合、以下などの受け入れ準備を行います。
• 銀行口座を作る
• 水道や電気・ガス、携帯電話などの契約
• 入社前オリエンテーションや研修
• 市区町村への各種届出 など
外国からは住まいの手配などが物理的に難しい為、企業のサポートが必須です。
国内在住で住居の確保などが不要であったとしても、入社前にオリエンテーションや研修は実施するのがおすすめです。
生活をする上で必要な知識はもちろん、働く上でのマナーやルールを事前に伝えておけば、トラブルの発生を未然に防止可能です。
外国人採用を行う際の注意点
メリットがある一方で、外国人採用には以下のデメリットや注意点が存在します。
◉ 採用してから入社までに時間がかかる
◉ 仕事内容に合わない在留資格を持った外国人は雇用出来ない
◉ 国籍や人種の差別はしてはいけない
◉ 外国人の文化の違い・価値観を受け入れる
◉ 労務管理の知識が必要
上記について順に解説していきます。
スムーズな意思疎通をはかれない事がある
相手の日本語レベルにもよりますが、スムーズに意思疎通をはかれない可能性があります。
会話がある程度定型化しており、十分な気遣いをした上で行う面接時にはスムーズに話せても、現場で同様にコミュニケーションがとれるとは限りません。
日本語は独特な言い回しが多く、専門用語やビジネス用語などは、ネイティブでない外国人にとって理解しにくいと感じるケースが存在します。
スムーズに意思疎通をはかる為には、以下を意識すると効果的です
• 長文は避ける
• 俗語や略語は使用しない など
採用してから入社までに時間がかかる
先ほど解説した通り、採用してから入社までに時間がかかる為、ご注意ください。
とくに、就労出来る在留資格の取得には1ヵ月~2ヵ月程度、場合によっては3ヵ月程度の期間を要します。
海外に住む外国人を雇用する場合は、本人の渡航や自社の受け入れに関する準備などを含め、国内の方より多くの時間を要します。
すぐに雇用し、働き始めてもらえるわけではありません。
仕事内容に合わない在留資格を持った外国人は雇用できない
仕事内容に合わない在留資格を持った外国人は雇用出来ません。
資格は複数存在し、大きく就労出来るものと出来ないものにわけられます。
また、就労出来るものであったとしても、業務内容や労働時間などが定められています。
万が一、保有しているものが仕事内容に合わない場合は、変更手続きをしなければなりません。
ただし、必ずしも変更が認められるわけではない為、雇用する外国人の職歴や学歴を確認し、必要な在留資格を取得可能か事前に調べるのがおすすめです。
在留資格を得られなければ、採用・雇用にかかった費用が全て無駄になってしまいます。
国籍や人種の差別はしてはいけない
当然ですが、国籍や人種などに関する差別をしてはいけません。
採用での合否に影響させたり、給与などの雇用条件を不当に低くしたりしないようにご注意ください。
また、「〇〇人歓迎」など国籍や人種で選別する求人募集を出さないようにしましょう。
さらに、雇用した場合もともに働く従業員が差別をしないように、受け入れ態勢を整えるのが大切です。
外国人の文化の違い・価値観を受け入れる
受け入れられなければ、トラブルに発展したり業務が円滑に進まなかったりする為、受け入れ尊重する事が重要です。
例えば、外国人によっては宗教上の理由などにより、禁止されている食べ物や行為が存在します。
万が一強要した場合、ハラスメントでトラブルになるケースも。
また、仕事の進め方も文化や価値観が大きく影響します。
日本であれば全てを伝えなくても察して行動したり、皆で協力して仕事を進めたりします。
一方、外国人の中には伝えられていない事はやらない、個人主義で自分の仕事しかやらないなどの人も存在します。
事前に雇用する外国人の文化や価値観を調べ、注意点などを把握しておくのがおすすめです。
労務管理の知識が必要
不法就労にならないようにビザの有効期限の管理や在留資格の確認をしなければならず、労務管理の知識が必要です。
在留資格を持たない外国人や、合わない在留資格を保有している外国人を雇用した場合、本人と企業の双方に罰則が科せられる為ご注意ください。
具体的には、企業側には3年以下の懲役かもしくは300万円以下の罰金が科せられます。
また、外国人を常時10人以上雇用する場合は「外国人労働者雇用管理責任者」を専任しなければなりません。
≫≫ 外国人採用におけるフェーズごとの注意点を分かりやすく解説
外国人採用の流れは?メリットから雇用の手順や注意点までを徹底解説 まとめ
本記事では、外国人採用のメリットや注意点、要する期間・コスト、6つの手順について解説しました。
労働人口が減少する日本において、外国人採用は人手不足を解消する為に有効な選択肢の一つです。
外国人を採用すれば、若手人材が確保出来るだけでなく、グローバル進出をする際の戦力確保や異文化導入による社内の活性化などのメリットを得られます。
まずは、自社が求める外国人のスキルなどを明確にし、募集方法を検討してみてはいかがでしょうか。